時代劇の制作技術が、国の登録無形文化財を目指している。「時代劇」そのものではなく、あくまでその制作技術が対象で、京都府の「『時代劇』の学術的評価に係る調査報告書」(令和7年)は、京都の撮影所などで伝承されてきたさまざまな技術を可視化し、学術的視点で評価を試みた。
監修に当たった京都文化博物館の森脇清隆・映像文化創造支援センター長は「時代劇という文化は歌舞伎や浄瑠璃などの古典芸能を受け継ぎ、建築や着物などを取り込んだ総合芸術として発展してきた。その文化が存続の危機にあります」と警鐘を鳴らす。
制作数激減と技術継承の危機
かつてテレビや映画でおなじみだった時代劇は近年、コスト高や時代の変化で制作数が激減。一方、大小道具、所作に殺陣、衣装にカツラといった技術を持つ人材が高齢化し、徒弟制度的に受け継がれてきたその継承が危ぶまれている。
そんな中で一昨年、米テレビ界の最高峰・エミー賞で米配信ドラマ「SHOGUN 将軍」が作品賞などを受賞。リアルな時代劇をめざし、職人を招くなど日本流の制作手法を持ち込んだことが話題になった。また昨年、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画「侍タイムスリッパー」は京都の時代劇撮影所を舞台にした作品だ。自主製作映画にもかかわらず大ヒット、時代劇への注目を集める話題作となった。
登録無形文化財への期待
そうした背景も追い風となり、東映や松竹の撮影所があり長く時代劇制作の地となってきた京都府が力を入れている。登録無形文化財は令和3年の文化財保護法改正で新たに創設された制度で、すでに書道、華道、京料理などの生活文化が登録されている。ところが芸能分野ではまだ登録がなく、初の登録へ期待がかかる。
地元での取り組みの一つに「京都ヒストリカ国際映画祭」の若手育成プログラム「京都フィルムメーカーズラボ」がある。毎年、世界からゲームクリエーターやアニメーターも参加して開かれる時代劇の制作ワークショップで、実は「SHOGUN」第8話の監督も以前に参加していた。「時代劇だけではなくアニメやゲームといった広義でのメディア芸術文化にもかかわる技術。今こそ手を打たなければ」と森脇さん。今年も対象となる文化財の定義や保持団体の明確化などを進める予定だ。
海外での高い関心
実際、海外では変わらず日本の時代劇への関心、評価は高い。2018年に英BBCが史上最高の外国語映画100作品を発表したが、1位が「七人の侍」、3位「東京物語」、4位「羅生門」だった。時代劇で描かれる誠実さや誇りといった伝統的な日本の価値観や倫理観も海外でファンが多い理由らしい。時代劇は日本への理解を深めるツールでもある。



