水素を燃料とする航空機エンジンの実用化を目指す新たなプロジェクトが、2026年7月に正式に始動した。このプロジェクトは、2030年代の就航を目標に掲げ、国内外の企業や研究機関が連携して技術開発を加速する。
プロジェクトの概要と参加機関
プロジェクトには、航空機メーカーやエンジンメーカー、大学、研究機関など約20団体が参加。総事業費は約500億円で、うち約300億円を国の補助金で賄う。プロジェクトリーダーを務めるのは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の田中一郎氏。
田中氏は「水素航空機は、二酸化炭素を排出しないクリーンな航空機として期待されている。しかし、実用化には燃焼技術や燃料供給システムなど、多くの課題がある。本プロジェクトでは、これらの課題を一つ一つ解決し、2030年代の就航を目指す」と述べている。
技術的課題と開発スケジュール
水素航空機エンジンの実用化には、水素の燃焼制御技術や燃料タンクの軽量化、地上での水素供給インフラの整備など、多くの技術的課題がある。プロジェクトでは、2028年までに要素技術を確立し、2030年から地上試験を開始。2035年には実機での飛行試験を実施し、2037年の商業運航開始を目指す。
また、水素燃料の供給については、空港での水素製造・貯蔵・供給システムの開発も並行して進める。プロジェクトには、エネルギー関連企業も参加し、水素サプライチェーン全体の構築を目指す。
環境負荷低減への期待
航空業界は、国際民間航空機関(ICAO)の目標として、2050年までに二酸化炭素排出量を2005年比で50%削減することを掲げている。水素航空機は、その目標達成の切り札として期待されている。ただし、水素の製造に再生可能エネルギーを使用しないと、ライフサイクル全体での排出削減効果が限定的となるため、グリーン水素の活用が鍵となる。
プロジェクトでは、水素の製造段階での排出削減も視野に入れ、再生可能エネルギー由来の水素(グリーン水素)の利用を促進する方針だ。また、水素航空機の導入により、航空業界の二酸化炭素排出量を最大で80%削減できると試算している。
今後の展望と課題
水素航空機の実用化には、技術面だけでなく、規制や安全基準の整備、国際的な協調も必要となる。プロジェクトでは、国際標準化機構(ISO)などと連携し、国際的な基準づくりにも貢献する方針。
田中氏は「水素航空機は、航空業界の脱炭素化に大きく貢献できる。しかし、実用化にはまだ時間がかかる。関係者と一丸となって、着実に開発を進めていきたい」と語った。



