宇宙の仕事と聞くと、理系出身のロケット技術者を思い浮かべるかもしれない。だが、いま宇宙産業の現場には、車づくりや衣服の小売りなど、異業種で得た力を携えて飛び込む人が増えている。成長産業を支える人材が足りないなか、業界外からの力に期待が集まっている。
宇宙産業の多様化と市場拡大目標
背景にあるのは、宇宙産業の多様化だ。通信、防災、安全保障、位置情報といった、私たちの社会に欠かせない機能を人工衛星が支えている。
国は、2020年に4兆円だった国内の宇宙市場の規模を、30年代の早期に8兆円へ広げる目標を掲げる。すでに大学などにより、100社以上の宇宙ベンチャーが設立された。
自動車の試作から衛星づくりへ
8月、宇宙企業「Synspective」の神奈川県大和市の衛星工場。生産技術を担当する森俊輔さん(44)は、髪や衣服の繊維が部品に付かないよう白衣を着て、長さ約5メートル、幅約80センチのアンテナの仕上がりをチェックしていた。
生産している小型SAR衛星は、宇宙から地上へ電波を送り、はね返ってきた電波を受け取って地表の画像をつくる。夜間や雲に覆われた場所も観測できるのが特徴だ。
7月の熊本地震、24年1月の能登半島地震のときは、被害が疑われる場所を上空から観測し、自治体などに提供した。
「衛星から画像が届いた時は、『無事に動いてくれたな』と安心する瞬間です」
正確に観測するには、アンテナ表面の無数の穴から出る電波を、一つの方向にそろえて飛ばす必要がある。森さんの仕事は、打ち上げ時には畳まれているアンテナが、宇宙で開いたときに表面が平らにそろうよう、地上でマイクロメートル単位の調整をしながら組み立てることだ。
前職は自動車業界で、試作車…



