乳がん経験者の田辺さん、水陸両用の胸パッド開発 三原とバリ拠点
乳がん経験者、水陸両用の胸パッド開発 三原とバリ拠点

「乳がん手術後もお気に入りの水着でサーフィンを楽しみたい」という思いから、三原市とインドネシア・バリ島の2拠点で活動する旅行ツアー業の田辺美智恵さん(55)が、水陸両用の乳房補整パッドを開発した。ウェットスーツの素材を使い、水上スポーツで水圧を受けてもずれにくく、日常生活でも安心して動ける仕様。「切除の失意から前を向き、自分らしく生きたいと願う人の役に立ちたい」と予約販売を始める。

サーフィンとの出会いと乳がんの診断

福山暁の星女子中・高校を経て関東の大学を卒業した田辺さん。広告制作に携わっていた20歳代後半にサーフィンに魅せられ、15年前からはバリ島に移住してサーフィン事業や旅行ツアー業を営む。2024年春、胸の形に違和感を感じて中高時代の友人に相談。同年7月、福山市内の病院で切除手術を受けた。

乳房再建は「切除から1年後以降に」との診断で、想像よりも時間がかかった。手持ちの布で作ったパッドをブラジャーに着けて外出中、外国人から「胸元から何か飛び出してる」と言われた。「自信作だっただけに泣けてきた。切除を気づかれたくなかった」と、しばらくふさぎ込んだという。

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試行錯誤を経て完成したパッド

その後、様々な市販品も試した。綿など布製は水にぬれるとつぶれ、シリコーン製は実物に近いが重すぎる。ずれる商品も少なくなく、肌に貼るタイプは蒸れて不快さがまさり、長時間使うとストレスが募った。数十万円する人工乳房は、薬の副作用で太ったり痩せたりしてサイズが変わることを考えると、簡単には踏み切れなかった。

試行錯誤を経て、仕事で知り合った東京のサーフィン用ウェットスーツ製造会社に相談すると、「身内にも患者がいた」と技術や素材の提供に応じてくれた。縫製方法やパッドの詰め物の素材を共に研究。ボタンから面ファスナーに変えたり滑り止めを付けたりし、サーフィンをはじめ、ヨガやダンス、水泳などで使い心地を何度も試し、1年半かけて納得のいくパッドを完成させた。

特許取得と販売開始

特許を取得し、ブランド名はサンスクリット語で「慈愛」と「知恵」を意味する「プレマ・ボーディー」に。本体はおにぎり形で高さ10・5センチ、幅15センチ。胸の形に応じて12枚のパーツで厚みを調整する。専用下着は要らず、面ファスナーで愛用の水着や下着に着脱可能。洗濯機で洗えて乾きも早い。税込み5万円。

開発を通じ、全国で新たに年間約10万人が乳がんと診断され、成人女性の約9人に1人が経験すると知った。一方、田辺さんは乳房補整具の購入助成制度は地域によって差があることも学び、「広島県は助成対象外で残念」と話す。

田辺さんは「乳がんは誰でもかかる可能性のある病気だが、本当のつらさは女性らしさの象徴を失う点。だが、落ち込んでも落ち込まなくても時は流れる。補整パッドで外に飛び出し、思い切り今を楽しんで」と呼びかける。問い合わせはプレマ・ボーディー(prema@bows-surf.com)へ。

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