トヨタ自動車と日本電信電話(NTT)は、自動運転車向けの次世代AI半導体を共同開発すると発表した。2030年までに量産化を目指し、現在の自動運転システムと比較して処理性能を約10倍に高める計画だ。両社は、それぞれが持つ半導体設計技術と通信インフラの知見を持ち寄り、安全性と効率性を両立した車載プラットフォームの構築を目指す。
背景と狙い
自動運転技術の進化に伴い、車載コンピューターには膨大なセンサーデータをリアルタイム処理する能力が求められている。現在の半導体では、L3以上の高度な自動運転に必要な演算性能を十分に発揮できないケースが指摘されてきた。トヨタとNTTは、この課題を解決するため、AI処理に特化した専用半導体をゼロから設計することを決断した。
トヨタは、自動運転ソフトウェア開発会社「Woven Planet Holdings」を通じて、車両制御や認識技術のノウハウを提供。一方、NTTは、光通信技術やデータセンター運用で培った低消費電力・高性能な半導体設計の経験を生かす。両社は、共同開発の成果をトヨタ車だけでなく、他メーカーへの供給も視野に入れている。
開発の具体的な内容
新半導体は、AIのディープラーニング処理に最適化されたアーキテクチャを採用し、電力効率を従来比で5倍以上に向上させる見込み。また、NTTが開発中の「光電融合技術」を応用し、半導体内部のデータ伝送速度を大幅に高速化する計画だ。これにより、カメラやLiDAR、レーダーなど複数のセンサーからの情報を瞬時に統合・分析することが可能になる。
量産開始時期は、2028年の試作品完成を経て、2030年ごろを予定。車載用として高い信頼性が求められるため、自動車業界の厳格な品質基準に対応した製造プロセスを確立する。トヨタの豊田章男会長は、「この協業は、自動運転の社会実装を大きく前進させる重要な一歩だ」とコメントしている。
業界への影響
自動運転向け半導体市場は、米インテルやエヌビディア、モービルアイなどが先行する中、トヨタとNTTの参入により競争が激化しそうだ。特に、日本発の技術で自動運転の核心部品を開発する試みは、自動車産業のサプライチェーンにも影響を与える可能性がある。
また、NTTにとっては、通信事業以外の成長分野として半導体事業を強化する好機となる。同社は、2025年度までに半導体関連投資を1000億円規模に拡大する方針を示しており、今回の協業はその一環と位置づけられる。
自動運転の実用化に向けては、法規制や社会受容性の課題も残るが、トヨタとNTTは技術面でのブレークスルーを目指す。両社の協業が、自動運転の普及時期を早める可能性に注目が集まる。



