東洋経済の独自取材により、日本の半導体産業復活に向けた政府の戦略と、その最前線で進むプロジェクトの実像が明らかになった。政府は2023年度補正予算案に、半導体関連で過去最大となる約1.3兆円を計上。これは、経済安全保障の観点から国内での半導体生産基盤強化を急ぐ姿勢を示すものだ。
ラピダス社の進捗と課題
政府が旗振り役となるラピダス社は、北海道千歳市に建設中の工場で、2025年の試作ライン稼働を目指す。同社は、2ナノメートル世代の先端半導体を量産する計画で、その実現には約5兆円の資金が必要と試算される。東洋経済の取材に対し、ラピダスの小池淳義社長は「技術的なハードルは高いが、産学官の連携で必ず達成する」と語った。
しかし、課題も山積する。半導体製造には高度な技術を持つ人材が不可欠だが、日本ではその不足が深刻だ。経済産業省の試算では、今後10年間で約3万5000人の半導体技術者が不足する見通し。ラピダスは、台湾や米国からの人材受け入れも検討するが、専門家からは「長期的な育成策が不可欠」との指摘がある。
政府の支援策と企業の動き
政府は、ラピダスへの直接支援に加え、既存の半導体メーカーや装置メーカーへの補助金も拡充する。2023年度補正予算には、TSMCの熊本工場への支援も含まれており、総額1.3兆円のうち約9000億円がラピダスとTSMC向けとされる。
また、官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)は、半導体材料大手のJSRを約9000億円で買収する方針を発表。これは、素材分野での競争力強化を狙ったもので、業界再編の加速が予想される。
産業復活の鍵を握るのは人材育成
日本の半導体産業は、かつて世界を席巻したが、1990年代以降、シェアを大きく落とした。復活には、技術面だけでなく、人材育成と産学連携の強化が急務だ。東洋経済の分析では、国内の半導体関連の大学・研究機関への投資が不足しており、政府は教育プログラムへの支援も検討している。
ある半導体業界アナリストは、「日本が再び半導体大国になるためには、技術開発と人材育成への長期的な投資が不可欠。短期的な補助金だけでなく、中長期的な戦略が必要だ」と指摘する。
経済安全保障と国際協力
半導体は、経済安全保障の要として位置づけられ、各国が自国での生産強化を競う。日本は、米国や欧州と連携し、サプライチェーンの多元化を進める。政府関係者は「特定国への依存を減らすため、国際的な協力枠組みを活用する」と述べた。
一方で、巨額の投資が財政負担となる懸念もあり、国民の理解を得るための説明が求められる。東洋経済は、今後も日本の半導体戦略の行方を追跡する。



