EV用シリコンカーバイドパワー半導体の国産化が加速、日米欧でサプライチェーン構築へ
EV用SiCパワー半導体の国産化加速、日米欧でサプライチェーン構築

電気自動車(EV)の航続距離延長や充電時間短縮に不可欠な次世代パワー半導体「シリコンカーバイド(SiC)」の国産化が加速している。従来のシリコン製に比べ電力損失を半分以下に抑えられるSiCは、EVのエネルギー効率を大幅に向上させる。この重要部品を巡り、日米欧の企業がサプライチェーン構築に乗り出した。

東芝が2000億円投資、国内生産能力を5倍に

東芝は2024年度までに約2000億円を投じ、石川県の工場でSiCパワー半導体の生産能力を現在の5倍に引き上げる計画だ。同社は2025年度のSiC事業売上高を500億円と目標に掲げる。これにより、国内自動車メーカーへの安定供給が期待される。

一方、ロームは福岡県の工場で2024年から量産を開始。2025年には生産能力を2021年比で5倍以上に増強する方針を示している。富士電機も2024年に松本工場でSiCの生産を始める計画だ。

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欧州勢も積極投資、サプライチェーン多極化

欧州では、ドイツのインフィニオンテクノロジーズがオーストリアの工場に約20億ユーロ(約3000億円)を投資し、2024年からSiCの量産を開始する。STマイクロエレクトロニクス(仏伊)もイタリアの工場で生産能力を増強中だ。

米国では、ウルフスピードがニューヨーク州に世界最大級のSiC工場を建設中で、2025年の稼働を目指す。同社は既に独フォルクスワーゲンや米ゼネラル・モーターズと長期供給契約を結んでいる。

日本政府の半導体戦略と連動

日本政府は2021年に策定した半導体戦略で、次世代パワー半導体の国内生産基盤強化を重要項目に位置付けた。経済産業省は「SiCなどの次世代半導体は、カーボンニュートラル実現の鍵を握る」と強調する。補助金制度を活用し、国内企業の設備投資を後押ししている。

市場規模は2030年に1兆円超へ

富士経済の調査によると、世界のSiCパワー半導体市場は2022年の約2100億円から、2030年には約1兆2000億円に成長する見通し。EV向けが全体の7割以上を占めると予想される。この急拡大市場を巡り、日米欧の企業間でシェア争いが激化している。

課題はコストと歩留まり向上

SiCはシリコンに比べて製造コストが高く、歩留まりも低い。晶文が指摘するように「SiC基板の品質向上とコスト低減が普及のカギ」だ。各社は200mmウエハーの採用や製造プロセスの改良で、2025年までにコストを半減させる目標を掲げる。

また、供給不足を背景に、自動車メーカーと半導体メーカーの直接契約が増加。トヨタ自動車はデンソーと共同でSiCの開発を進めており、日産自動車もロームと協業を発表している。

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