世界的な半導体不足が長期化する中、電気自動車(EV)シフトによる需要急増が半導体の供給網に深刻な影響を与えている。業界関係者は「2025年まで需給逼迫が続く」と予測しており、自動車メーカーや電子機器メーカーは生産調整を余儀なくされている。
半導体不足の背景と現状
半導体不足は、2020年以降のパンデミックによるデジタル需要の急拡大と、サプライチェーンの混乱が主因だ。特に車載半導体の需要は、EVシフトや自動運転技術の進展により従来比で約2倍に増加。これに対し、半導体メーカーの生産能力増強は追いついていない。
業界団体の調査によると、2023年の半導体市場規模は前年比8.2%増の約5740億ドルに達した。一方で、主要な半導体ファウンドリの設備稼働率は95%を超え、新規受注を制限するケースが相次いでいる。
EVシフトがもたらす需要構造の変化
EV1台に搭載される半導体の数は、従来のガソリン車の約2倍に相当する。さらに、自動運転レベル3以上の車両では、センサーやプロセッサーの需要が一層高まる。このため、自動車業界は半導体の安定調達が事業継続の鍵を握ると認識している。
ある自動車部品メーカーの調達責任者は「以前は半導体メーカーとの長期契約が一般的ではなかったが、今では3~5年の契約が当たり前になりつつある」と語る。また、トヨタ自動車は2023年、半導体の内製化を加速する方針を発表し、自社開発の半導体を2025年までに実用化する計画だ。
供給網の再構築と政府の支援策
各国政府も半導体の安定供給に向けた支援を強化している。日本政府は2023年、半導体関連の補正予算として約1.3兆円を計上。台湾のTSMCや米インテルなど海外メーカーの国内誘致を進めている。
また、経済産業省は「半導体・デジタル産業戦略」を策定し、2030年までに国産半導体の売上高を現在の約5倍の15兆円に引き上げる目標を掲げた。これに対し、半導体装置メーカーの東京エレクトロンは「政府支援を追い風に、国内サプライチェーンの強化を図る」とコメントしている。
今後の見通しと課題
半導体不足の解消時期については、業界団体の予測では2025年以降とみられる。ただし、地政学的リスクや需要の変動によっては長期化する可能性もある。特に、先端半導体の製造に必要な露光装置など、一部の製造装置の納期が2年以上に及んでいることが課題だ。
さらに、半導体設計の複雑化に伴い、開発コストも上昇している。7ナノメートル以下の先端プロセスでは、1つの設計に数百億円の投資が必要とされる。このため、自動車メーカーや家電メーカーは、既存の汎用半導体の活用や、設計の簡素化などによるコスト抑制を模索している。
まとめ
半導体不足は、EVシフトやデジタル化の加速により構造的な需要増加が背景にある。供給網の再構築には、半導体メーカーの設備投資拡大に加え、政府の支援や業界全体の連携が不可欠だ。自動車業界を中心に、半導体の安定調達に向けた取り組みが今後も続く見通しである。



