自動車部品大手のデンソーは、電気自動車(EV)向けパワー半導体の内製化を加速している。2025年までに生産能力を現在の約3倍に引き上げる計画で、安定調達とコスト削減を図る。同社は、半導体不足が続く中で、競争力強化の鍵を握るとみている。
パワー半導体の需要急増
EVの普及に伴い、電力変換効率を高めるパワー半導体の需要が急増している。デンソーは、シリコンカーバイド(SiC)を用いた次世代パワー半導体の開発を進めており、2023年度中に量産を開始する予定だ。SiCは従来のシリコンに比べて電力損失が少なく、EVの航続距離延長に貢献する。
半導体不足が業界を直撃
世界規模での半導体不足は自動車業界に深刻な影響を与えてきた。トヨタ自動車は2022年に複数回の減産を余儀なくされ、デンソーも部品供給に支障をきたした。こうした背景から、デンソーは半導体の内製化を推進し、外部調達リスクを低減する方針だ。
デンソーの林新之助社長は「半導体は自動車の頭脳であり、安定的な調達は経営の根幹に関わる。内製化により、技術開発のスピードも向上する」と述べている。
競合他社も追随
デンソーだけでなく、他の自動車部品メーカーも半導体内製化に動き出している。独ボッシュは2021年からSiC半導体の量産を開始し、独インフィニオンテクノロジーズもEV向け半導体の生産能力を増強中だ。日本の部品メーカーも、国際競争に生き残るために内製化が不可避とみられる。
デンソーは、2025年までに生産能力を3倍にすることで、年間数百万台分のEVに対応可能な半導体供給体制を構築する計画だ。これにより、EVシフトが加速する中で、同社の競争力強化につなげる。
投資規模と今後の見通し
デンソーは、半導体内製化に2025年までに総額約1600億円を投資する方針。このうち、SiC半導体の生産ライン増強に約500億円を充てる。同社は、半導体内製化により、長期的には部品コストを2割程度削減できると試算している。
しかし、半導体内製化には巨額の投資が必要であり、すべての部品メーカーが追随できるわけではない。業界関係者は「規模の経済が働く大手が優位に立つ」と指摘する。



