レッツノート復活プロジェクト、1kg未満の軽さと6時間駆動でビジネスモバイルを再定義
レッツノート復活、1kg未満と6時間駆動でビジネスモバイル再定義

パナソニックのノートパソコン「レッツノート」復活プロジェクトは、まずコンセプトの「ブレ」を修正することから始まった。ターゲットを明確に再定義し、手本としたのは欧米におけるタフブックの成功だった。タフブックは堅牢ノートとして北米警察で約半分の市場シェアを獲得し、「堅牢性」というブレないコンセプトで成果を収めていた。

ターゲットとコンセプトの再定義

プロジェクトチームは、レッツノートの提供価値を再認識。レッツノートは「軽くて、持ち運べて、ビジネスマンがどこでも仕事ができるノートパソコン」として生まれた。そこでターゲットを「ビジネススーツを身にまとう男女」、コンセプトを「ビジネスマンの鞄に入るパソコン」に設定。これは原点回帰とも言える。

また、パナソニックが展開していた「HITO」の存在が、コンシューマ領域への展開やAV機能搭載を考慮する必要をなくし、ビジネスモバイルに特化できる理由の一つとなった。さらに、パソコン事業の組織一本化により、タフブックの開発ノウハウがレッツノートにも活用できるタイミングが重なった。

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目標設定:1kg未満、5時間駆動

大阪・西門真の会議で、AVC社のトップが描いたノートパソコンのスケッチに「1kg」と記された。競合のモバイルノートは1.3kg前後であり、その4分の3の重量を目指す高いハードルが設定された。同時にバッテリー駆動時間5時間も目標とされた。

開発チームは自らレッツノートを持ち歩くモバイラー集団であり、ビジネスモバイルに必要な条件を体験から理解していた。「競合製品よりも3割軽く、バッテリーは2倍持つ」が合言葉となり、「できる、できないではない。必ず達成する目標である」という号令がかけられた。

CF-R1:世界最軽量960g、6時間駆動を実現

開発チームはまず軽量化の限界を探る試作を行い、1kgを遥かに下回るものを作り上げたが、落下に耐えられない水準だった。そこにタフブックの堅牢ノウハウを加えて強化。通常は壊れないものを作ってから軽量化するパナソニックにとって異例のアプローチだった。関係者は「社内では『努力と根性方式』と呼んでいた」と振り返る。

こうして2002年3月に発売された「CF-R1」は、10.4型XGA液晶、超低電圧版モバイルPentium III 700MHz-M、20GB HDDを搭載。重量は目標を大きく下回る約960g(世界最軽量)、バッテリー駆動時間は6時間を達成した。当時の新幹線は東京-新大阪間が約3時間で座席にコンセントがなく、6時間は往復でも利用可能な駆動時間だった。

CF-R1は初めて「ボンネット構造」を天板に採用し堅牢性を向上。パームレスト部の波型デザインで放熱性を高め、独自形状の「ホイールパッド」も初搭載した。キーボードは2色構成のキートップ、視認性の高い独自フォント、切り抜き文字で長期使用でも消えにくい工夫が施された。

販売面では、直販サイト「マイレッツ倶楽部」で液晶サイドカバーとホイールパッドリングのカラーカスタマイズを業界初で開始。CF-R1は発売から2~3週間で初回販売台数を完売した。

CF-T1:わずか半年で開発、法人需要を獲得

プロジェクトチームは「ビジネスモバイルとして魅力的な製品を立て続けに3つ投入する」方針を掲げていた。CF-R1の反響を受け、法人営業部門から「12.1型液晶搭載モデルをすぐに作ってほしい」との要望が上がった。

開発チームは購入者の声を反映。CF-R1のキーピッチ17.5mmに対し、19mmを求める声や、VGA端子標準搭載の要望に応えた。目標は12.1型液晶、1kg未満、5時間以上駆動、キーピッチ19mm。CF-R1から重量増加をわずか39gに抑えることが課された。

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2002年11月発売の「CF-T1」は、最軽量モデルで999g、主力モデルでも1045gを達成。世界最薄0.55mmのマグネシウム合金を採用し、本体底面に約300個の穴を空けて軽量化。VGA端子も標準搭載した。開発期間はわずか半年で、過去最短での完成となった。CF-T1は発売直後から企業導入が相次ぎ、CF-R1を大きく上回る販売実績を達成した。

CF-W2:シェルドライブ搭載、怒号と情熱で量産化

三つ目の矢「CF-W2」は、CD-ROM/DVDドライブを搭載しながら12.1型液晶、B5ファイルサイズに収める目標を掲げた。開発チームはパナソニックコミュニケーションズ(旧九州松下電器)に対し、ドライブユニットをケースカバーなしの部品として供給する異例の提案を行った。

通常はケースカバーに組み込まれた状態で供給され品質保証されるが、レッツノートではパームレスト左側のカバーを開けて直接ディスクを挿入する構造を採用。供給側は難色を示したが、粘り強い交渉の末、共同開発・共同品質保証という形で合意した。関係者は「グループ内だからこそ無茶が言えた」と振り返る。

この「シェルドライブ」は通常約200gのドライブを約99gに半減。CF-W2はCD-ROM/DVDドライブ搭載ノートとして世界最軽量1290gを実現した。

量産では神戸工場から「なんでこんなものを作ったんだ。1個作るのに1日かかるぞ!」と怒鳴り込まれる事態に。開発者は門真と神戸を往復し、生産技術部門の協力で改善を重ねた。熟練技術者でも数時間かかった組み立てが、改良により量産化された。

CF-W2は2003年5月に発売され、パナソニックの想定を上回る売れ行き。CF-R1やCF-T1と比べ桁違いの販売実績となった。コンシューマユーザーにもその魅力が伝わり、ドライブ搭載A4ノートを求めて来店した客がCF-W2を購入するケースが相次いだ。

三部作が確立した「シン・レッツノート」

第一の矢CF-R1でモバイラーを獲得、第二の矢CF-T1で法人ユーザーを獲得、第三の矢CF-W2でコンシューマユーザーに裾野を広げた。三機種に共通するのは「持ち運んで利用するモバイルパソコン」としての用途にこだわった点だ。これによりレッツノートの認知度とイメージが向上し、モバイルパソコンとしての想起率も高まった。