大阪・関西万博で人気を博したシグネチャーパビリオン「いのちの未来」が、新たなシナリオを追加しパワーアップした「いのちの未来+」が、東京・高輪の「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」で9月25日まで開催されている。大阪大学の石黒浩教授が手掛けた展示で、アンドロイド「ジェミノイドHI-6」も登場する。
新たな3つの体験が追加
MoN Takanawaの内田まほろ氏(アーティスティック・ディレクター)の説明によると、「いのちの未来+」は、大阪・関西万博の展示をそのまま再現したものではなく、3つの体験を新たに加えたという。
1つ目は、新しい「物語」だ。大阪・関西万博の「いのちの未来」では、50年後の未来を舞台に、記憶をアンドロイドへ引き継ぐかどうかが問われた。それに対して、「いのちの未来+」では一歩進み、来場者自身に「自分とは何か?」「自分のいのちの未来について、どのような選択をするのか?」を問いかけるシナリオが加えられている。
2つ目は、現代により映えるという設定の、目新しさのあるアンドロイドとの対話だ。こちらは、彼がかつて通った二松學舍大学(当時は「二松學舍」)の協力によって実現した。
3つ目は、本展で感じたことを日常に持ち帰るきっかけとなる、オリジナルグッズの拡充だ。
「いのちの未来+」のポイント
内田氏は、本展が演劇、映像、あるいは一般的な「回遊型展示」とも異なる「体験」であるとした上で、「登場するのは、ほぼ全てロボット。本当に新しい形のエンターテインメントになっていると思う」と語った。
新しいシナリオに関する説明は、CHOCOLATE Inc.のチーフコンテンツオフィサーである虎岩明氏が担当した。今回の「いのちの未来+」では、万博の「いのちの未来」向けに制作したシナリオのうち、最後の「エピローグ」に当たる場面を更新した。4人のアンドロイドによる会話句を通じて、観客が会話を一方的に聞くだけでなく、思わず議論に加わり、自分でも考えたくなるような構成を目指したという。
虎岩氏は、未来の姿を断定的に示すのではなく、見る人に問いを投げかけることを重視したとした上で、こう語る。「未来はこうなると提示するのではなく、『未来はどうなるのだろうか?』という問いを提示することが大切です」。加えて、今回はアンドロイドの細かな表情や動きも見どころの一つとなっており、万博当時からさらに技術に磨きをかけ、より精緻な表現を実現したとのことだ。
石黒教授が語る「近い未来の問題」
石黒教授は、今回の展示に込めた思いを語った。大阪・関西万博のパビリオンでは「50年後の未来」を描いていたが、その後もAIやロボットは急速に進歩している。大規模言語モデル(LLM)が人間のように会話し、人と関わるロボットの開発も進む中、アンドロイドに記憶を引き継ぐ未来は、50年後ではなく、5年ほど先に訪れる可能性もあるという。「今回の展示で描かれるテーマを『遠い未来の話』としてではなく、『私たちが責任を持って考えるべき身近な問題』として受け止めてほしい。もっと近い未来の問題として、私たちが責任を持って考えなければならない」と述べた。
最後に、内田氏がジェミノイドHI-6に「いのちの未来+」の感想を尋ねた。ジェミノイドHI-6は、「技術そのものは毎年進歩し、表情や動きも改善していく一方、『いのちとは何か?』という問いには、いまだ誰も明確な答えを持っていない」と指摘する。「難しいのは、その根源的なテーマを、どのように人に理解してもらい、エンターテインメントとして成立させるか」とも語った。



