東京・歌舞伎町の中心地で、ほぼ24時間営業を40年続ける「コーヒーショップクール」。この店には、驚くべきことに業務マニュアルが一切存在しない。自分で見聞きして学び、考え、行動すべきという方針だからだ。しかし、かつてはこの「マニュアルなし」を「ゆるい」と勘違いしたスタッフもいたと、店長の島田さんは語る。
マニュアルなしの落とし穴
「例えばスタッフが、お客さんに背を向けておしゃべりしたり、スマホをいじっていたりしたら、そんなお店には行きたくないですよね。その積み重ねで、ボディブローのように経営が悪化してしまっていたんです。当たり前のことができているかどうか、これはすごく大きいです」と島田さんは振り返る。
そこで島田さんは、「昭和の親父」になることを徹底した。意識が低いスタッフには容赦なく叱責する。辞めてしまう者もいれば、真摯に受け止めて改善する者もいた。結果的に3年ほどかけて、スタッフたちはマニュアルがないことの意味を理解し、能動的に働くようになった。売り上げも大きく改善されたという。
チェーン店にはない魅力
コーヒーの淹れ方やフードメニューの調理方法のマニュアルもない。材料や分量は決まっているが、基本的には先輩の作り方を後輩が伝承していく。そのため、スタッフによって得意メニューが異なり、味が若干変わることもあるという。チェーン店ではまずないオペレーションやサービスが、個人店ならではのユニークさとして今も残り続けている。
クール名物のカレーライスも、均一化されていない味が魅力だ。マニュアルに縛られない自由な発想が、常連客を引きつけてやまない理由の一つと言えるだろう。



