OEMの限界と自社ブランドへの決断
岐阜県可児市に本社を置く三洋産業は、コーヒーペーパーフィルターを主力とするコーヒー機器メーカーだ。1973年の創業以来、長らく大手メーカーやコーヒーショップ向けのプライベートブランド(PB)製品を手掛けるOEMメーカーとして成長してきた。しかし、OEMビジネスには限界があった。よく売れる商品ほど発注元から値下げを求められ、原材料費や人件費が上昇する中で価格だけが下がっていく。注文が増えて残業が続いても、残業代を支払えば利益はほとんど残らない。良いものを作っても主導権は発注元にあり、事業の先行きを描けなかった。
粗利率が理想とする水準の半分以下にまで落ち込んだとき、現社長の中村彰次氏は「OEMの受注価格を適正な水準まで引き上げる」と決断した。値上げに応じない取引先とは取引を終了する覚悟だった。当時の売上高は10億円余りで、値上げによって2億5000万~3億円が失われる計算だったが、その穴はこれから立ち上げる自社ブランドで埋めると腹をくくった。
品質への信頼とネットワークを基盤に
三洋産業の製品品質は、コーヒー業界ですでに高く評価されていた。同社のペーパーフィルターは、他社ブランドとして販売されていた時代から、ハンドドリップの全国競技会に出場するトップバリスタや、コーヒーの味にこだわる専門店のオーナーといった「コーヒーのプロ」に愛用されていた。さらに、OEM時代から全国のコーヒーショップとの付き合いがあったため、販路も確保できていた。品質への信頼と既存のネットワークを土台に、2016年に自社ブランド「CAFEC(カフェック)」を立ち上げた。切り替えは比較的スムーズに進んだという。
中村社長は「ゼロになる覚悟でやりました。社員には一切責任を取らせない。全て私が責任を取るから、と伝えました」と振り返る。
世界80カ国以上に広がる販路
CAFECブランドのコーヒー器具は、現在世界80カ国以上の国・地域に販路を広げている。2025年度の売上高は過去最高の17億7800万円に達する見込みだ。中村社長は「クオリティーで勝負すれば、それを分かってくれる人たちが世界には必ずいる」と信じ、自社ブランドに賭けた。OEM時代の売上高の3割を捨てる決断が、今や世界的なブランドへの成長を支えている。



