岐阜県下呂市で、かつて日帰り温泉施設としてにぎわっていた「ゆったり館」が、うなぎ養殖の拠点に生まれ変わった。2025年1月から試験養殖を開始し、2026年1月に本格参入した事業者は、高山市で屋台村を運営するTri-win(トライ・ウィン)だ。温泉水を活用した飼育により、脂がのりながらも軽い口当たりのうなぎを実現。さらに、燃料費の節約によって低価格での出荷が可能となった。
放置された温泉施設の転用
「ゆったり館」は1992年に開業し、1998年度には年間19万人の利用者を数えた。しかし、2019年度には5万人に減少。新型コロナウイルスの影響で管理業者が2021年3月に撤退し、その後は新たな事業者が見つからず放置されていた。
全国の地方都市では、バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代初頭にかけて、地域振興や観光客誘致を目的に公営の日帰り温泉施設が数多く整備された。しかし、コロナ禍や燃料費高騰の影響で休廃業に追い込まれる施設が増加している。
温泉熱で燃料費削減
Tri-winの伊藤通康社長は、温泉水の熱を利用することで、うなぎの養殖に必要な水温維持のための燃料費を大幅に削減できると説明する。通常の養殖では、ボイラーで水を温める必要があるが、温泉を活用することでコストを抑え、安価なうなぎの出荷が可能になる。
「全国にある温泉という資源を生かさないのはもったいない」と伊藤社長は語る。同社は、廃業した温泉施設を有効活用し、地域資源を最大限に生かすビジネスモデルを模索している。
軽い口当たりと低価格の実現
温泉水で飼育されたうなぎは、一般的なうなぎと比べて脂ののりが良く、軽い口当たりが特徴だ。試験養殖の段階で試食した関係者からは「臭みがなく、上品な味わい」と好評を得ている。また、低価格での提供が可能なため、消費者の負担を軽減できると期待されている。
現在、Tri-winは本格的な生産体制を整えており、今後は地元の飲食店や観光客向けに販売を拡大する計画だ。地域振興の新たなモデルとして注目されている。



