電気バス(EVバス)の導入が全国各地で進む一方、航続距離の短さや充電インフラの未整備といった実運用上の課題が浮き彫りになっている。バス事業者からは「期待していたほどの航続距離が出ない」「充電設備の設置コストが高すぎる」といった声が上がっており、普及の足かせとなっている。
航続距離はカタログ値の6割程度
実際の運行データによると、EVバスの航続距離はカタログスペックの約60%にとどまるケースが多い。例えば、ある事業者が導入したEVバスは、カタログ上では200キロの走行が可能とされていたが、実際の路線運行では120キロ程度しか走れなかった。これはエアコンやヒーターの使用、停車時の電力消費、勾配のある道路などが影響しているとみられる。
「夏場の冷房や冬場の暖房を入れると、航続距離が大幅に短くなる。特に北海道のような寒冷地では、バッテリー性能の低下も加わり、想定以上に充電が必要になる」と、あるバス事業者の運行管理者は語る。
充電インフラ整備の高コスト
充電インフラの整備も大きな壁だ。EVバス用の急速充電器は1基あたり数千万円と高額で、複数台を導入する場合、そのコストはバス本体価格を上回ることもある。さらに、充電器の設置には電力会社との協議や工事が必要で、導入までに半年から1年かかるケースも少なくない。
「充電器の設置場所の確保も難しい。既存のバスターミナルはスペースに余裕がなく、新たに用地を確保するとなると追加のコストが発生する」と、別のバス事業者は課題を挙げる。
運行ダイヤへの影響
航続距離不足は運行ダイヤにも影響を与える。充電時間を確保するため、従来より運行間隔を長く設定せざるを得ず、利用者の利便性が低下する恐れがある。特に都市部の路線では、頻繁な運行が求められるため、EVバスの導入は難しいという指摘もある。
「現在のEVバスでは、ラッシュ時の高頻度運行に対応するのは難しい。充電時間を考慮すると、どうしてもダイヤに余裕を持たせる必要がある」と、交通コンサルタントは分析する。
国や自治体の補助金活用が鍵
こうした課題に対し、国や自治体は補助金制度を設けて導入を後押ししている。環境省の「地域交通グリーン化促進事業」では、EVバスの導入費用の一部を補助するほか、充電インフラ整備にも補助金を交付している。しかし、事業者からは「補助金の申請手続きが煩雑で、事務負担が大きい」との声も聞かれる。
また、一部の自治体では、EVバス導入に伴う電力料金の割引制度を設けるなど、ランニングコストの低減策も模索されている。しかし、これらの施策が十分に浸透しているとは言えず、さらなる支援が求められている。
今後の展望
バス事業者の中には、EVバスと並行して燃料電池バス(FCバス)の導入を検討する動きもある。FCバスは航続距離が長く、充填時間も短いという利点があるが、車両価格が高く、水素ステーションの整備が必要という課題がある。
「EVバスとFCバス、それぞれに一長一短がある。路線の特性や運行距離に応じて、最適な車両を選ぶ必要がある」と、業界関係者は指摘する。
EVバスの導入は、脱炭素社会の実現に向けた重要な施策の一つだが、現状では多くのハードルが存在する。技術革新によるバッテリー性能の向上や、充電インフラの整備促進、そして国や自治体による継続的な支援が不可欠だ。



