イタリアの高級宝飾ブランド・ブルガリは、スイスを生産拠点とする時計ブランドとしても広く知られている。超薄型時計「オクトフィニッシモ」シリーズを手がけるなど、時計部門のデザインを統括するファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏がこのほど来日し、デザインの潮流や新作の開発背景を明かした。
小型化の潮流と新作37mmモデル
ブルガリが今年発表した男性向けの新作時計で打ち出したのは「小型化」だった。これまでケース径が40ミリだったオクトフィニッシモを37ミリへとサイズダウンした。この新モデルは、従来の記録重視のアプローチから一転し、実用性を追求した点が特徴だ。
機械式腕時計として最薄、永久カレンダー機構搭載で最薄、トゥールビヨン機構搭載で最薄――。オクトフィニッシモシリーズは、スイスの名門時計ブランドが築いてきた常識を次々と塗り替えてきた。しかし、今回の37ミリモデルは発想が異なる。
スティリアーニ氏は「40ミリモデルは『挑戦のための時計』でした。薄さの記録を打ち立てるための時計で、今もなお『記録の時計』です」と語る。一方、37ミリモデルについては「目指したのは、より使い勝手のいい時計です。以前のように薄さそのものに執着していません」と説明した。
駆動時間の向上と業界全体の変化
実際、新モデルは従来よりわずかに厚くなったが、その代わり駆動時間は約20%向上している。背景には時計業界全体の変化があるという。スティリアーニ氏は「いま時計業界は、本来あるべきサイズ感に戻りつつあると思います。以前は大きな時計が流行しました。でも実際にはケースばかり大きく、中のムーブメントは小さいことが多かった。全体として理想的な形状に回帰しているんです」と述べた。
この傾向は、ユーザーのニーズの変化も反映している。大きなケースは視認性や存在感で優れるが、日常使いには小さめのサイズが快適とされる。ブルガリは、薄さの記録よりもバランスの取れたプロポーションと実用性を重視したという。
デザインの着想源とブルガリの誇り
デザインの着想源について、スティリアーニ氏は「どこにでもある」と語る。例えば、建築や自然、アートなど日常生活の中からインスピレーションを得ることが多いという。ブルガリの時計デザインは、宝飾ブランドとしての伝統と、スイス時計製造の技術を融合させた独自のスタイルが特徴だ。
ブルガリは、ローマの宝飾店として1884年に創業。その後、時計製造に進出し、スイスのル・サンティエに工場を構える。オクトフィニッシモシリーズは、2014年に初めて発表され、以来、薄さと技術革新で注目を集めてきた。
スティリアーニ氏は「ブルガリの時計は、宝飾ブランドとしての誇りと、スイス時計製造の伝統を融合させたもの。常に革新を追求しつつ、エレガンスを忘れない」と強調した。
今後の展望
ブルガリは今後も、小型化の流れを継続しつつ、女性向けの時計や複雑機構搭載モデルなど、幅広いラインアップを展開する予定だ。同社は、時計業界の変化に対応しながら、独自のデザイン哲学を貫く方針である。
今回のインタビューは、7月14日に行われたもので、スティリアーニ氏は日本市場の重要性にも触れた。日本はブルガリにとって重要な市場の一つであり、今後も日本の顧客に向けた製品開発を強化する考えを示した。



