アップルが箱からプラスチックを完全に排除するまでに10年を要した。その過程で同社が決して変えなかったのは、開封体験の質である。
脱プラの潮流とアップルの違い
脱プラスチックは業界全体の潮流だ。サムスンはGalaxyの梱包でプラスチックをパルプモールドに置き換え、包装内のプラスチック比率を大幅に削減。アパレルのH&Mはオンライン購入品をFSC認証紙の梱包に切り替え、ミズノもシューズボックスを100%リサイクル紙化している。
しかし、多くの企業が「素材の置き換え」を主眼とするのに対し、アップルは置き換えと同時に「開封体験の質」を一切落とさないことを条件にしている点が異なる。
紙はクッションにならない――折り紙が解決
脱プラで最大の難関は大型製品の緩衝材だった。プラスチックをやめ、紙だけで衝撃から製品を守るのは難しい。紙そのものには緩衝性がほとんどないからだ。
アップルが出した答えは、段ボールを折り紙のように折り、構造そのもので衝撃を吸収する仕組みだった。展示されていたのは一見ただの地味な箱だが、初代iMacの発泡スチロールから、紙を固めた成形材(重すぎたという)を経て、段ボールの折り紙構造にたどり着くまで、失敗を重ねた歩みがあった。取材中には「折り紙(origami)」という言葉が何度も登場した。
かつてiMacには多くの発泡スチロールが使われていた。現在は折り紙を参考にした構造が採用され、衝撃吸収とサステナビリティを両立している。



