長らく裁判所のペーパー主義が影響し、DX(デジタルトランスフォーメーション)が最も遅れているとされてきた弁護士業界で、今やAIを利活用する層が急拡大している。弁護士はクライアントからの依頼に対し、過去の判例や文献、法令、ガイドラインなど膨大な資料を収集し、適切な法的助言を構築する必要がある。このリサーチ作業に多大な手間がかかることは以前から認識されており、2019年ごろからリーガルテックサービスを提供するスタートアップ企業が相次いで立ち上がった。
汎用AIの導入とその影響
2022年11月にChatGPTが一般公開されると、汎用AIを直接利用する弁護士が増加。さらに2026年1月には操作性が大幅に改善されたClaude(クロード)の登場により、弁護士はAIを無視できなくなった。一人事務所から大規模事務所まで、AI活用で業務効率化や案件数増加に成功する弁護士が多数現れている。
しかし、AI活用にはコスト増が伴う。法律事務所は高度なセキュリティー環境の整備が必須であり、低価格サービスでは守秘義務を全うできず、クライアントの信頼を得られない。そのため、資金力に勝りスケールメリットが働きやすい5大事務所の動向に関心が集まる。
5大事務所への取材結果
本誌は5大事務所にAIの利活用状況と今後の展望を取材し、4事務所から回答を得た。汎用AIの利用には各事務所の思想の違いが表れた。セキュリティー対策やナレッジ活用のハードルについても、各事務所が異なるアプローチを取っている。
例えば、ある大手事務所は「クライアントデータの保護を最優先に、自社開発のAIツールを導入している」と回答。別の事務所は「汎用AIを利用するが、機密情報は入力しないルールを徹底している」と述べた。ナレッジ活用については、「過去の判例データベースとAIを連携させ、検索効率を向上させた」という声が複数聞かれた。
今後の展望と課題
AI活用の拡大に伴い、弁護士業務の在り方は大きく変わろうとしている。一方で、セキュリティーリスクやコスト負担、ナレッジ共有の壁といった課題も浮き彫りになった。業界全体として、AIをどう活用し、どのようなルールを整備するかが今後の競争力を左右する。



