中国のスマートフォン企業シャオミ(Xiaomi)が、新たなEVブランドを発表し、自動車業界に大きな波紋を広げている。同社はスマートフォンから家電、そしてEVへと事業を拡大し、OSとエコシステムを武器に「ポスト・スマホ」時代の覇権を狙う。
スマホから家電・EVへ広げるシャオミの狙い
シャオミは2010年創業のスマートフォンメーカーで、2025年の世界スマホ出荷台数はサムスン、アップルに次ぐ第3位。日本でも低価格帯のコスパ重視モデルからライカと協業したカメラ特化機まで幅広く展開している。しかし現在、同社は単なるスマホメーカーではない。扇風機、炊飯器、ロボット掃除機、スマートテレビなど、自社スマホと連携する家電やIoT製品を急拡大。テレビ出荷では世界トップ5に入り、ソニーを上回る販売台数を記録している。シャオミのスマホはこれら製品をつなぐエコシステムの中核であり、ビジネスは「スマホ販売」から「スマートライフの提供」へとシフトしている。
EV事業への本格参入
この延長線上にあるのがEV事業だ。シャオミは2024年3月、4ドアセダン「SU7」でEV市場に参入。中国での発売直後、短時間で大量の予約を集め、「あのシャオミが出したEV」として注目を浴びた。その後、SUVテイストの「YU7」を追加し、動力性能と価格のバランスを前面に打ち出したEVラインを構築。モーター制御、バッテリー、車体構造、スマートコックピットなど主要コンポーネントの自社開発に踏み込み、自社工場も含めてEVの開発・製造に深く関与している。
先行するファーウェイのビジネスモデル
シャオミの戦略は、同じ中国企業であるファーウェイの成功モデルを参考にしている。ファーウェイはスマホ事業で世界トップクラスに上り詰めた後、自動車分野に進出。自社開発のOS「HarmonyOS」を核に、スマホ、家電、車をシームレスにつなぐエコシステムを構築し、中国市場で大きなシェアを獲得している。シャオミも同様に、自社のMIUIやHyperOSをベースにしたエコシステムを展開し、ユーザーに統一されたスマート体験を提供しようとしている。
国内制覇と海外展開、異なるターゲット
シャオミのEV戦略は、中国国内市場の制覇を優先しつつ、海外展開も視野に入れている。中国では既存のシャオミストアでEVを販売し、スマホユーザーを中心に顧客基盤を拡大。一方、海外では規制やブランド認知度の課題があり、段階的な展開が予想される。同社は価格競争力とエコシステムの利便性を武器に、テスラやBYDなど競合との差別化を図る。
スマート化する自動車が何を変えるか
シャオミの参入は、自動車のスマート化を加速させる。同社のEVは単なる移動手段ではなく、スマホや家電と連携する「生活インフラの一部」として位置づけられている。例えば、車内でスマホのアプリをそのまま使えたり、家のIoT機器を遠隔操作できたりする。これにより、自動車は「走るスマートデバイス」へと進化し、ユーザーのライフスタイル全体を変革する可能性がある。業界関係者は「シャオミのエコシステムは、自動車をデジタル生活の中心に据える新しいパラダイムを生み出す」と指摘している。
今後の展望と課題
シャオミのEV事業はまだ初期段階だが、同社の強みであるエコシステムと価格競争力で成長が期待される。一方で、自動車製造の複雑さ、品質管理、アフターサービス体制の構築など、克服すべき課題も多い。特に海外市場での成功には、ブランド力の向上と現地規制への適合が不可欠だ。シャオミが「スマホ・家電・EVの融合」をどこまで実現できるか、業界の注目が集まっている。



