米国における電気自動車(EV)の販売が予想以上に鈍化している。2024年第1四半期のEV販売台数は前年同期比でわずか2.6%増にとどまり、成長率は急減速した。これによりディーラーの在庫が増加し、値下げやインセンティブ強化による在庫処分競争が激化している。
在庫過剰と値下げの連鎖
自動車調査会社コックス・オートモーティブによると、2024年4月時点で米国のEV在庫は平均113日分に達し、ガソリン車の約2倍の水準となった。在庫過剰を解消するため、各メーカーは値下げに踏み切っている。テスラは年初からモデル3とモデルYの価格を何度も引き下げ、フォードは「マスタング・マッハE」の価格を最大8000ドル値下げした。
「市場は急速に変化している。消費者は価格に敏感になっており、EVへの移行は一時的なハードルに直面している」とコックス・オートモーティブのアナリスト、ステファニー・バルデス氏は指摘する。
消費者の関心低下と充電インフラの課題
販売鈍化の背景には、消費者の関心低下がある。J.D.パワーの調査では、次回購入時にEVを検討すると答えた消費者の割合が2023年の26%から2024年には24%に低下した。高金利や充電インフラの未整備、航続距離への不安が主な理由として挙げられる。
また、連邦政府の税額控除制度が複雑で、対象車種が限られることも需要を抑制している。バイデン政権は2030年までに新車販売の50%をEVとする目標を掲げるが、現状のペースでは達成は困難とみられる。
メーカーの戦略転換
各メーカーは生産計画の見直しを迫られている。ゼネラル・モーターズ(GM)は2024年のEV生産目標を40万台から20万〜25万台に下方修正し、フォードはF-150ライトニングの生産を一時停止した。一方、トヨタやホンダなどハイブリッド車に強みを持つメーカーは、EVシフトを緩やかに進める方針だ。
「EV市場はまだ初期段階であり、成長には時間がかかる。メーカーは需要に応じた柔軟な生産戦略が必要だ」と業界アナリストは語る。
今後の展望
長期的にはEV需要は拡大すると予想されるが、短期的には在庫調整と価格競争が続くとみられる。バッテリーコストの低下や充電インフラの整備が進めば、再び需要が加速する可能性がある。しかし、2024年の米国EV販売台数は約120万台と、当初予想の150万台を下回ると見込まれている。



