EVシフトの真実:日本の自動車産業が生き残るための条件
EVシフトの真実:日本自動車産業の生存条件

世界的な電気自動車(EV)シフトの加速により、日本の自動車産業は岐路に立たされている。内燃機関で培った技術やサプライチェーンの強みが、EV時代には必ずしも通用しないからだ。本稿では、日本勢が生き残るために必要な条件を、バッテリー調達やソフトウェア戦略の観点から掘り下げる。

EVシフトの現状と日本の立ち位置

国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば、2023年の世界のEV販売台数は前年比35%増の約1400万台に達し、新車販売に占める割合は18%を超えた。一方、日本国内のEV販売比率はわずか2%台と低迷しており、出遅れ感は否めない。トヨタ自動車はハイブリッド車(HV)で強みを持つが、EV専業のテスラや中国の比亜迪(BYD)に後れを取っているとの見方もある。

自動車業界アナリストの山田一郎氏(仮名)は「日本の自動車メーカーは、HVで稼いだ資金をEV開発に振り向ける『カニ歩き』戦略を取ってきたが、変化のスピードが想定以上に速い。このままでは、かつての携帯電話産業のように、日本の技術が世界標準から取り残されるリスクがある」と警鐘を鳴らす。

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バッテリー戦略の重要性

EVの心臓部であるバッテリーは、車両価格の約3割から4割を占めるとされ、調達コストと安定供給が競争力を左右する。現在、世界のリチウムイオン電池生産の約7割を中国が占めており、日本メーカーはパナソニックなど一部を除き、存在感が薄い。

日本政府は2023年、蓄電池の国内生産能力を2030年までに150ギガワット時に拡大する目標を掲げ、補助金を投入している。しかし、原材料の多くを中国に依存する構造は変わらず、経済安全保障上の課題も指摘される。山田氏は「日本はバッテリーの国産化だけでなく、使用済みバッテリーのリサイクル技術や、全固体電池など次世代技術の開発を急ぐべきだ」と提言する。

ソフトウェア定義車両(SDV)への転換

EVシフトは、パワートレインの電動化だけでなく、車両のソフトウェア化も伴う。テスラや中国の新興メーカーは、車載OSや自動運転技術を自社開発し、販売後もソフトウェアアップデートで機能を向上させる「ソフトウェア定義車両(SDV)」を推進している。

これに対し、日本の自動車メーカーは、ハードウェア中心の開発体制から脱却できていないとの批判がある。トヨタは2023年、次世代車両向けの独自OS「Arene(アリーン)」を開発中と発表したが、実用化にはまだ時間がかかる見通しだ。

「日本メーカーがSDVで遅れを取れば、自動運転やコネクテッドサービスといった付加価値領域で競争力を失う。自動車産業は、『モノづくり』から『コトづくり』への発想転換が不可欠だ」と山田氏は強調する。

生き残りの鍵:協調と選択と集中

日本勢が生き残るためには、単独での技術開発にこだわらず、異業種連携やスタートアップとの協業も重要になる。例えば、ソニーとホンダの合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」は、エンターテインメント技術と車両開発を融合させたEVを2025年に投入予定で、注目される。

また、限られた経営資源を集中させるため、得意分野への選択と集中も必要だ。商用車や小型EV、あるいはHVやプラグインハイブリッド車(PHV)など、地域や用途に応じたマルチパスウェイ戦略を維持しつつ、EVのコア技術では世界トップレベルを目指すべきだとの意見もある。

自動車産業は日本の基幹産業であり、関連雇用は約550万人に上る。EVシフトの荒波を乗り越え、持続可能な成長を実現できるかどうかは、官民を挙げた構造改革の成否にかかっている。

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