トヨタ自動車が電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池のリサイクル事業を専門に行う新会社を、2025年の稼働を目標に設立する方針を固めたことが、複数の関係者への取材で明らかになった。同社は使用済み電池からリチウムやコバルトなどのレアメタルを高効率で回収し、新たな電池の原料として再利用する循環型システムの構築を目指す。
新会社の概要と事業計画
新会社はトヨタの完全子会社となる見込みで、本社は愛知県内に置かれる。資本金は数十億円規模で、初年度の従業員は約100人を想定。2025年の稼働開始後、まずはトヨタのハイブリッド車(HV)やEVから回収した使用済み電池を処理し、年間で約1万トンの電池廃棄物をリサイクルする計画だ。
回収したレアメタルは、トヨタグループの電池メーカーであるプライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)や、トヨタとパナソニックの合弁会社などに供給される。これにより、トヨタは2030年までに電池の原材料調達コストを現行比で30%削減する目標を掲げている。
リサイクル技術の優位性
トヨタはこれまで、リサイクル技術に関して独自の湿式精錬プロセスを開発してきた。このプロセスは、使用済み電池を粉砕・選別した後、化学処理によってリチウム、コバルト、ニッケル、マンガンを95%以上の高純度で回収できるという。従来の乾式法に比べてエネルギー消費が約40%少なく、CO2排出量も削減できる点が強みだ。
同社の担当者は「EVの普及に伴い、使用済み電池の処理が環境面での課題となっている。当社の技術は資源の有効活用と環境負荷低減の両立を実現する」とコメントしている。
業界全体の動向と競争
世界のEV市場の拡大に伴い、電池リサイクル事業への参入が相次いでいる。中国の宁德時代(CATL)や韓国のLGエナジーソリューションなどもリサイクル施設の建設を進めており、トヨタの新会社もこうした競争に巻き込まれる可能性がある。
しかし、トヨタは自社グループ内で使用済み電池を回収し、自社の電池生産に再利用するクローズドループシステムを構築することで、他社との差別化を図る。また、トヨタは2026年までに全世界で年間150万台のEVを販売する目標を掲げており、それに伴い発生する大量の使用済み電池の処理が急務となっている。
サステナビリティへの貢献
トヨタは2050年までに新車のライフサイクル全体でのCO2排出量をゼロにする目標を掲げており、電池リサイクルはその達成に向けた重要な要素と位置づけている。新会社の設立により、使用済み電池から回収したレアメタルを新たな電池に再利用することで、資源採掘に伴う環境負荷を低減できる。
さらに、トヨタは2030年までにリサイクル材の使用比率を現行の約10%から50%以上に引き上げる計画で、新会社の稼働はその達成に貢献する。また、回収したレアメタルを海外からの輸入に依存せずに調達できるようになるため、サプライチェーンの安定化にもつながる。
今後の展望
トヨタは新会社の設立に先立ち、2024年中にパイロットプラントを建設し、リサイクル技術の実証試験を行う予定だ。実証試験の結果を踏まえ、2025年からの本格稼働を目指す。また、将来的にはトヨタグループ以外の自動車メーカーからも使用済み電池を受け入れ、リサイクル事業を拡大する可能性もある。
業界アナリストは「トヨタの取り組みは、EVの持続可能性を高めるだけでなく、日本の資源循環型社会の実現にも貢献するだろう」と評価している。一方で、リサイクルコストの低減や、電池の多様化(全固体電池など)への対応など、課題も残されている。



