トヨタ自動車は、中国市場での電気自動車(EV)販売強化に向け、上海近郊にEV専用工場を新設する方針を固めた。2027年の稼働開始を目指しており、現地生産能力を大幅に拡大する。これは、中国市場で急成長するEV需要に対応するとともに、BYDなど地元メーカーとの競争激化を踏まえた戦略の一環とみられる。
新工場の概要と背景
新工場は、トヨタの中国合弁会社である広汽トヨタが建設を担当する。投資額は約1000億円規模と見込まれ、年間生産能力は10万台以上を想定。生産する車種は未公表だが、トヨタのEV専用プラットフォーム「e-TNGA」を採用したモデルが中心になるとみられる。
トヨタはこれまで、中国市場ではガソリン車やハイブリッド車を主力としてきたが、中国政府のEV推進政策や消費者のEVシフトを受け、戦略転換を迫られている。2023年の中国市場でのEV販売台数は約2万台と、BYDの約300万台に大きく水をあけられている。
中国EV市場の競争激化
中国は世界最大のEV市場であり、2023年の新車販売に占めるEV比率は約25%に達する。政府は2035年までに新車販売の50%をEVとする目標を掲げており、市場はさらに拡大が見込まれる。一方で、BYDや上海汽車など地元メーカーが台頭し、価格競争も激化している。
トヨタは2026年までにグローバルでEV販売を年間150万台に引き上げる目標を掲げており、中国市場での生産体制強化は不可欠と判断した。新工場では、現地サプライチェーンを活用し、コスト競争力を高める方針だ。
トヨタのEV戦略と課題
トヨタは長年、ハイブリッド車や水素燃料電池車に注力してきたが、EVシフトの加速を受け、2021年にEV戦略を発表。2030年までに30車種のEVを投入し、年間350万台の販売を目指す。しかし、中国市場では製品ラインナップの不足や充電インフラの課題が指摘されている。
業界アナリストは「トヨタの中国EV市場でのシェアはわずか0.3%と、存在感は限定的だ。新工場の稼働で状況は改善するが、地元メーカーとの差は大きく、価格競争力やソフトウェア面での差別化が課題となる」と指摘する。
今後の展望
新工場の稼働により、トヨタは中国市場でのEV生産能力を現在の約5倍に引き上げる計画。また、2025年には中国市場向けの新型EVを投入する予定で、現地開発体制も強化する。トヨタは「中国市場は最重要市場の一つ。お客様のニーズに応えるため、EVラインアップを拡充し、持続可能なモビリティ社会の実現に貢献する」とコメントしている。
一方、中国のEV市場では、過剰生産能力や価格競争の激化が懸念されており、トヨタの新工場計画もリスクを伴う。しかし、長期的な市場成長を見据え、トヨタは投資を継続する方針だ。



