愛知県春日井市にあるトヨタホームの春日井事業所では、黒い鉄骨が茶色や灰色の水槽に次々と沈められ、隣の水槽へと移されていく。この一連の工程は、まるで自動車工場の製造ラインのような機敏さを感じさせる。7月上旬に訪れた工場では、鉄骨表面のゴミや油を水槽で洗い落とした後、塗料槽に浸し、電気を流して塗膜を密着させる「カチオン電着塗装」と呼ばれる工程が行われていた。これは自動車製造で培われた技術であり、サビを防ぐための重要なプロセスである。
自動車技術が住宅製造に革新をもたらす
トヨタホームの起源は、1975年に新設されたトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)の住宅事業部に遡る。同社は、無駄を省き合理性を追求する「トヨタ生産方式」や、不具合発生時にラインを止める「アンドン」といった仕組みを住宅製造にも継承している。工場では、標準的な住宅1戸あたり約10ユニットを製造し、専用トラックで建設現場へ運搬する。工程の約85%を工場内で完了させるため、設計から3カ月足らずで住宅が完成し、従来の現場施工と比較して1カ月以上の工期短縮を実現している。
サビ対策が長期保証を支える
工場を案内した広報渉外部の山口高志さん(49)は、「サビは傷や塗装のムラのわずかな隙を狙って鉄骨に入り込み、住宅の耐震性にも影響する。サビを寄せ付けない技術があるからこそ、『60年長期保証』をうたえる」と説明する。カチオン電着塗装は、鉄骨の隅々まで塗料が行き渡り、強固な防錆層を形成するため、長期にわたる耐久性が確保される。この技術により、トヨタホームは業界でも長い保証期間を実現している。
工場ラインの効率性と品質管理
工場内では、鉄骨の洗浄から塗装、乾燥、組み立てまでが一貫して行われる。技術者が床、天井、4本の鉄柱を組み立て、電線を張り巡らせ、キッチンや風呂などの設備を取り付けて箱形の「ユニット」に仕上げる。無人搬送車がユニットを運搬し、効率的な生産を支えている。自動車生産で培った品質管理のノウハウが、住宅製造にも活かされている。



