トヨタ自動車と日産自動車が、電気自動車(EV)の使用済みリチウムイオン電池をリサイクルする共同実証を2024年度中に始めることがわかった。国内の自動車メーカー同士がEV電池のリサイクルで協力するのは初めて。両社は、回収した電池からレアメタルを抽出し、新たな電池の原料として再利用する技術の確立を目指す。
実証の概要と目的
実証では、トヨタと日産が販売したEVから取り外した使用済み電池を、両社がそれぞれ保有するリサイクル施設に持ち寄り、処理する。具体的には、電池からコバルトやニッケル、リチウムなどの希少金属を高効率で回収する技術を検証。回収した金属は、両社が新たに生産する電池の材料として活用する計画だ。
この取り組みは、経済産業省が推進する「バッテリーサプライチェーン構築事業」の一環として実施される。トヨタと日産は、2025年度までに実証を完了し、2030年ごろの本格的なリサイクルシステムの稼働を目指す。
背景と課題
EVの普及に伴い、使用済み電池の廃棄量は増加の一途をたどる。日本国内では、2030年には約15万トンの使用済みEV電池が発生するとの試算もある。現状では、多くの電池が埋め立て処分されているが、資源の有効活用や環境負荷低減の観点から、リサイクル技術の確立が急務となっている。
トヨタの担当者は「単独では技術開発やコスト面で限界がある。業界全体で協力し、持続可能な資源循環の仕組みを作りたい」とコメント。日産の担当者も「競争領域と協調領域を明確にし、社会課題の解決に貢献する」と述べている。
海外の動向と日本の戦略
欧州連合(EU)は2023年、EV電池のリサイクル率を2031年までに70%以上とする規制を導入。中国も電池リサイクル企業への補助金制度を拡充している。日本政府も、2022年に策定した「蓄電池産業戦略」で、国内の電池リサイクル率を2030年までに40%以上に引き上げる目標を掲げている。
トヨタと日産の共同実証は、こうした国際的な動きに対応するための布石とみられる。両社は、リサイクル技術の標準化やコスト低減を図ることで、日本のEV産業の競争力強化につなげたい考えだ。
今後の展望
今回の実証には、ホンダやマツダなど他の自動車メーカーも関心を示しているとされる。業界全体でのリサイクルネットワーク構築が進めば、使用済み電池の回収率向上やコスト削減が期待できる。
専門家は「自動車メーカーがリサイクルで連携するのは世界的にも珍しい。成功すれば、日本のEV産業の優位性を高めるモデルケースになる」と評価する。一方で、リサイクルコストの低減や、電池の設計段階からのリサイクル容易性の確保など、課題も多い。



