世界的な電気自動車(EV)販売の減速を背景に、日産自動車と本田技研工業(ホンダ)が経営統合に向けた協議を開始したことが、複数の関係筋への取材で明らかになった。両社の合計販売台数は年間約800万台に達し、世界第3位の自動車グループが誕生する可能性がある。この動きは、EVシフトに伴う巨額の投資負担や競争激化に対応するための業界再編の一環とみられている。
経営統合の背景と協議の詳細
日産とホンダは、2024年12月18日に開かれた取締役会で、経営統合に向けた基本合意書を締結した。両社は、2025年6月を目途に最終合意を目指し、2026年8月までに共同持株会社を設立する計画だ。統合比率や役員構成などの詳細は今後詰められるが、日産の内田誠社長とホンダの三部敏宏社長が共同でトップを務める案が浮上している。
この統合協議の背景には、世界的なEV販売の伸び悩みがある。2024年の世界EV販売台数は前年比約20%増の見込みだが、当初予想された50%以上の成長には遠く及ばない。特に中国市場では、BYDなど地元メーカーの台頭により、日産やホンダのシェアは低下傾向にある。また、欧州連合(EU)の2035年までの内燃機関車販売禁止方針の見直し議論や、米国でのEV補助金政策の不透明感も、両社の経営判断に影響を与えたとされる。
両社の財務状況と統合のメリット
日産は2024年度上期(4~9月)の連結営業利益が前年同期比で約90%減の329億円に落ち込み、11月には世界で9,000人の人員削減計画を発表した。一方のホンダも、EV関連投資の拡大により、2024年度の設備投資額が過去最高の1兆円を超える見通しだ。統合により、両社はEV用バッテリーやソフトウェア開発などの共同調達・開発で年間数千億円のコスト削減効果を見込む。
業界アナリストは「両社の経営資源を結集することで、EVや自動運転技術の開発競争で生き残る可能性が高まる」と指摘する。特に、ホンダが強みとするハイブリッド車(HV)技術と、日産が蓄積してきたEV用バッテリー技術の融合は、競争力向上につながると期待されている。
業界再編の波と今後の展望
この動きは、自動車業界全体の再編を加速させる可能性がある。日産が筆頭株主である三菱自動車も、統合協議に参加する方向で調整中だ。三菱自の加藤隆雄社長は「グループ全体の最適解を検討する」と述べており、3社連合の形成も視野に入っている。
一方、日産と仏ルノーの資本関係も焦点となる。日産はルノーとアライアンスを組んでいるが、今回のホンダとの統合により、ルノーとの関係見直しも迫られる。ルノーのルカ・デ・メオCEOは「日産の決断を尊重する」とコメントしているが、資本関係の整理は今後の交渉課題となる。
世界的には、フォルクスワーゲン(VW)とフォードの提携強化や、中国のBYDのグローバル展開加速など、業界再編の動きが活発化している。日本の自動車メーカーとしては、トヨタ自動車もスバルやマツダとの協業を進めており、統合の波は日本全体に広がる可能性がある。
経済産業省は、自動車産業の競争力強化に向けて、企業連合を支援する方針を示している。自動車産業は日本のGDPの約8%を占める基幹産業であり、今回の統合協議は日本経済全体にも大きな影響を与えるとみられる。今後の動向が注目される。



