経済産業省は、新築の戸建て住宅とマンションに対し、電気自動車(EV)用充電器の設置を義務付ける方針を固めた。2025年度にも関係省令の改正など制度設計を開始し、2030年度までに施行することを目指す。これにより、EV普及の最大の課題である充電インフラ不足の解消を図る。
背景と目的:EV普及に向けたインフラ整備
政府は、2035年までに新車販売を全て電動車(EV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車)とする目標を掲げている。しかし、2023年度のEV販売比率は約2%にとどまり、充電インフラの整備が遅れていることが普及の障壁となっている。経産省の試算では、2030年までに全国で約30万基の充電器が必要とされているが、現状は約4万基にとどまる。
今回の義務化は、住宅への充電器設置を促進することで、自宅での充電を可能にし、EVユーザーの利便性を向上させる狙いがある。特に、一戸建て住宅では駐車場に充電器を設置しやすいが、マンションでは管理組合の承認が必要など、設置が進んでいない。経産省は、マンションでの設置を後押しするため、補助金の拡充も検討する。
対象と義務化の内容
義務化の対象は、新築の戸建て住宅とマンション(共同住宅)の全区画。ただし、駐車スペースがない住宅や、電源確保が技術的に困難な場合は例外とする。具体的には、各駐車スペースに充電器を設置するか、将来の設置を見据えた配管や配線の準備(コンジットパイプの敷設など)を義務付ける方向で調整が進められている。
経産省は「充電器本体の設置までは求めるが、コスト負担を考慮し、配管のみの準備でも可とする案も検討している」と説明する。設置費用は1基あたり20万~40万円程度で、国は補助金で半額程度を支援する方針だ。
業界の反応と課題
住宅業界からは「コスト増につながる」との懸念の声が上がる。一方、自動車メーカーや充電器メーカーは歓迎しており、「EV普及の追い風になる」と期待する。日本EV充電インフラ協議会(CHAdeMO協議会)は「住宅への充電器設置はEVユーザーの満足度向上に直結する。義務化は時宜を得た施策だ」と評価する。
課題として、マンションでは管理組合の合意形成や工事の調整が難航するケースが想定される。経産省は、マンション管理組合向けのガイドライン策定や、設置工事の標準化を進める方針だ。
今後のスケジュール
経産省は2025年度中に有識者会議を設置し、具体的な制度設計を議論する。2026年度には省令改正案をまとめ、パブリックコメントを経て、2030年度の施行を目指す。また、既存住宅への設置促進策として、税制優遇や補助金の拡充も検討する。
政府は、2030年までに公共用と住宅用を合わせて30万基の充電器設置を目標としており、今回の義務化で住宅用の設置が加速すると見込まれる。経産省幹部は「住宅への充電器設置が進めば、EVの走行環境は大幅に改善する。2030年度の目標達成に向け、着実に準備を進めたい」と述べている。



