「米国でEV販売が急減速」は本当か?現地で見えた真実と日本メーカーの誤算
米国EV販売急減速の真実と日本メーカーの誤算

「米国でEV(電気自動車)の販売が急減速している」という見方が広がっている。しかし、これは本当なのか。実際に米国市場を調査すると、全体の販売台数は依然として増加傾向にある。2024年上半期の米国EV販売台数は前年同期比で約10%増加しており、決して「急減速」とは言えない。ただし、成長率が鈍化しているのは事実で、2021~2023年のような年率50%超の急成長から、安定期に入ったと見るべきだ。

減速感の正体:在庫と価格競争の激化

減速感が広がる背景には、ディーラー在庫の増加と価格競争の激化がある。2023年までは供給不足で納車待ちが当たり前だったが、2024年に入り在庫が潤沢になり、値引き販売が一般化した。テスラが主導する値下げ競争は、フォードやGMなどの既存メーカーにも波及し、EVの実売価格は前年比で平均5~10%下落している。これにより、中古EVの価格も急落し、リセールバリューを懸念する消費者が新車購入を躊躇するという悪循環も生じている。

また、充電インフラの整備遅れも成長鈍化の一因だ。米国では急速充電器の設置台数が増加しているが、地域間格差が大きく、都市部以外では充電難民が発生している。特にアパート住まいのユーザーにとって、自宅充電ができないことがEV購入の大きな障壁となっている。

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日本メーカーの戦略的誤算

こうした状況下で、日本メーカーのEV戦略の遅れが顕在化している。トヨタやホンダはハイブリッド車(HV)に注力し、EVへの本格参入を遅らせてきた。その結果、米国市場でのEVラインナップは極めて限定的で、競争力のある価格帯のモデルが不足している。トヨタのbZ4Xやホンダのプロローグは販売台数でテスラやヒョンデ、起亜に大きく水をあけられている。

さらに、日本メーカーは米国でのEV生産体制も整っていない。バッテリー調達や現地生産の計画は遅れ気味で、インフレ抑制法(IRA)による税額控除の対象となる車両も少ない。これにより、価格面でも競争力を失っている。

一方、韓国メーカーのヒョンデや起亜は、米国でEV販売を急拡大している。彼らは早くからEV専用プラットフォームを開発し、充電インフラへの投資も積極的だ。また、米国で生産する計画を前倒しし、IRAの優遇措置を最大限活用している。

今後の展望:EV市場は拡大基調

長期的に見れば、米国EV市場は拡大基調を維持するだろう。カリフォルニア州など一部の州では2035年までのガソリン車新車販売禁止を決定しており、連邦政府の燃費規制も強化されている。自動車メーカー各社は巨額の投資をEVに振り向けており、技術革新も急速に進んでいる。

ただし、成長速度は従来の予測より緩やかになる可能性が高い。高金利や経済不透明感が消費者の高額商品購入をためらわせている。また、HVがEVの「つなぎ」として引き続き人気を集めるだろう。日本メーカーにとっては、HVで稼いだ資金をEV開発に振り向ける好機と捉えるべきだが、市場の変化に合わせた迅速な戦略転換が求められる。

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