ドイツ自動車産業は、電気自動車(EV)への移行と中国市場の低迷という二重の逆風に直面し、かつてない岐路に立たされている。フォルクスワーゲン(VW)は、ドイツ国内の工場閉鎖を検討しており、これは87年の歴史で初めてのことだ。メルセデス・ベンツ・グループは利益警告を発し、BMWも販売台数の減少に苦しんでいる。
VWの工場閉鎖計画と労使対立
VWは、コスト削減のためにドイツ国内の複数の工場閉鎖を検討している。同社のブルームCEOは、「欧州市場での需要低迷と中国市場での競争激化に対応するため、抜本的な構造改革が必要だ」と述べている。これに対し、労組は強く反発しており、大規模なストライキも辞さない構えだ。
VWの乗用車ブランドの利益率は、2024年第2四半期にわずか2.3%にまで低下した。これは、2023年同期の4.8%から大幅に悪化している。同社は、2026年までにコストを100億ユーロ削減する計画だが、工場閉鎖が実現すれば、数千人の雇用が失われる可能性がある。
メルセデス・ベンツの利益警告と中国市場の低迷
メルセデス・ベンツは2024年7月、利益警告を発表した。同社の第2四半期の営業利益は、前年同期比19%減の40億ユーロにとどまった。特に中国市場での販売が低迷しており、高級車の需要が減退している。中国市場はメルセデス・ベンツの全販売台数の約3分の1を占めるため、影響は大きい。
中国では、地元メーカーであるBYDやNIOなどのEVメーカーが急速に台頭しており、ドイツメーカーのシェアを脅かしている。中国政府のEV普及政策もあり、ガソリン車からEVへの移行が加速している。ドイツメーカーは、中国市場での競争力を維持するために、EVの現地生産を強化しているが、コスト面での課題は大きい。
BMWの苦戦と業界全体の課題
BMWも、2024年第2四半期の販売台数が前年同期比1.3%減の61万8千台となった。特に中国市場では5.2%減と落ち込みが顕著だ。同社は、EVモデルの投入を加速しているが、充電インフラの整備不足や価格競争の激化が課題となっている。
ドイツ自動車工業会(VDA)は、2024年の国内乗用車生産台数が前年比5%減の420万台になると予測している。これは、2019年の水準を20%下回る。VDAのヒルデガルト・ミュラー会長は、「ドイツの自動車産業は、構造的な変革期にある。EVへの投資を続ける一方で、コスト競争力を高める必要がある」と述べている。
政府の支援と業界の将来展望
ドイツ政府は、自動車産業の変革を支援するため、EV購入補助金や充電インフラの整備に巨額の予算を投じている。しかし、補助金の打ち切りや予算削減が議論されるなど、支援策の持続性には疑問符がつく。
業界アナリストは、ドイツ自動車産業が生き残るためには、EVシフトへの迅速な対応と中国市場への依存度低減が不可欠だと指摘する。また、ソフトウェア定義車両(SDV)への移行や、自動運転技術の開発も重要な要素となる。



