リニア中央新幹線をめぐり、静岡県とJR東海の間で約10年間続いてきた激しい対立に終止符が打たれた。静岡工区の着工が認められ、東京・品川―名古屋間の全線着工のめどが立った。この計画の全体像を改めて解説する。
リニア中央新幹線とは
リニア中央新幹線は、超電導磁気浮上式鉄道(リニアモーターカー)を採用し、最高時速500キロで走行する計画だ。これは、現在国内最速の東北新幹線「はやぶさ」の時速320キロや、東海道新幹線「のぞみ」の時速285キロを大きく上回る。品川から名古屋まで、のぞみでは1時間26分かかるところを、リニアでは40分に短縮する。
また、巨大地震などで東海道新幹線が運行不能になった場合、リニアが代替ルート(バイパス)として機能することも期待されている。国土の大動脈を二重化することで、災害時のリスク分散につながる。
「リニア」の仕組み
「リニア」とは英語で「直線の」を意味し、車両がレールに接触せず、磁力で浮上して走行する方式を指す。超電導磁石と地上コイルの相互作用で浮上・推進し、空気抵抗を減らすため、高速走行が可能になる。JR東海は長年の研究開発を経て、実用化にこぎつけた。
駅の設置場所
計画では、品川駅(東京都)を起点に、神奈川県(相模原市付近)、山梨県(甲府市付近)、長野県(飯田市付近)、岐阜県(中津川市付近)に中間駅を設け、名古屋駅(愛知県)に至る。各駅は地域の交通結節点として整備が進められる。
着工の経緯と今後の見通し
静岡工区は、大井川の水資源や生態系への影響を懸念する静岡県とJR東海の間で長年折り合いがつかず、着工が遅れていた。しかし、JR東海が環境対策で譲歩したことなどから、静岡県知事が着工を容認。これにより、全線着工の見通しが立った。
ただし、開業時期については依然として不透明だ。リニア中央新幹線の総事業費は約9兆円に上り、静岡工区の着工遅れでコストがさらに膨らむ可能性がある。JR東海は2027年の開業を目指していたが、現時点で延期は避けられない見通しだ。
リニア開発の歴史
リニアの開発は1960年代に始まり、JR東海が長年にわたって技術を磨いてきた。2013年には山梨県で試験線での走行試験を実施し、時速603キロの世界記録を達成。2020年には品川―名古屋間の本格着工に着手したが、静岡工区の課題が残っていた。
今後の課題
着工が決まっても、リニアには多くの課題が残る。まず、総工費の増大が懸念される。また、トンネル工事に伴う地盤沈下や騒音、水資源への影響など、環境面での対策が求められる。さらに、開業後の収益性も課題で、投資回収には長期間を要する。
それでも、リニア中央新幹線は日本の高速鉄道技術の象徴であり、実現すれば世界最速の営業運転となる。静岡工区の着工合意を機に、全線開業に向けた動きが加速することが期待される。



