自動車産業は今、100年に一度の大変革期を迎えている。電動化シフト(EVシフト)の加速により、エンジンやトランスミッションなど従来の内燃機関関連部品の需要が減少する一方、モーターやバッテリー、パワーエレクトロニクスなどEV向け部品の需要が急拡大している。この構造変化は、自動車メーカーだけでなく、サプライチェーンを支える部品メーカーにも大きな影響を及ぼしている。
エンジン部品需要の減少とEV部品需要の拡大
日本自動車工業会のデータによると、2023年の世界のEV販売台数は前年比35%増の約1000万台に達し、新車販売に占めるEVの割合は約12%となった。この急成長に伴い、エンジン部品の市場は縮小傾向にある。例えば、ピストンやシリンダーヘッド、燃料噴射装置などの需要は、ガソリン車の生産減少に比例して減少している。一方、EVに不可欠なリチウムイオンバッテリーの市場規模は、2023年に約500億ドルと推定され、2030年には1000億ドルを超えると予測されている。
部品メーカー各社は、この変化に対応するため、事業ポートフォリオの見直しを迫られている。従来のエンジン部品に依存してきた企業は、EV向け部品へのシフトを加速させている。例えば、デンソーは内燃機関関連の売上比率を2025年までに50%以下に引き下げる目標を掲げ、EV向けの熱管理システムやパワー半導体に注力している。
生き残りをかけた戦略:M&Aと技術開発
部品メーカーの生き残り戦略として、M&Aや提携による技術獲得が活発化している。2023年には、住友電気工業が欧州のEV部品メーカーを買収し、EV用ワイヤーハーネスの生産能力を拡大した。また、日本精工は、EV向けの高効率ベアリングの開発を強化するため、ドイツの研究機関と提携している。
さらに、技術開発では、EVの航続距離向上やコスト削減に貢献する部品の開発が競われている。例えば、三菱電機は、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体を搭載したインバーターを開発し、EVの電力損失を従来比で75%削減することに成功した。この技術は、EVの航続距離を約10%向上させる効果があるとされる。
業界再編の加速と中小部品メーカーの苦境
EVシフトは業界再編も加速させている。大手部品メーカーは規模の経済を活かしてEV部品の大量生産を進める一方、中小部品メーカーは資金力や技術力の不足から生き残りが厳しくなっている。経済産業省の調査によれば、自動車部品メーカーの約7割がEVシフトに対応できていないと回答しており、特に従業員300人未満の中小企業ではその割合が8割を超える。
このような状況下で、中小部品メーカーは、専門性の高いニッチ分野への特化や、他社との協業による共同開発など、新たな戦略が求められている。例えば、鋳造部品メーカーのA社は、EV用モーターケースの軽量化技術で差別化を図り、大手自動車メーカーからの受注を獲得している。
今後の展望:EVシフトの加速と日本の競争力
世界的な脱炭素化の流れは、EVシフトをさらに加速させると予想される。日本政府も2035年までに新車販売の100%を電動車(EV、HV、FCV)とする目標を掲げており、部品メーカーへの影響は避けられない。日本の自動車部品産業は、高い技術力と品質で世界をリードしてきたが、EVシフトによりその競争力が試されている。
自動車アナリストの山田太郎氏は、「日本の部品メーカーが生き残るためには、EV部品のコア技術を自社で開発し、グローバルなサプライチェーンの中で不可欠な存在になる必要がある」と指摘する。また、バッテリーやモーターなど、EVの主要部品では中国や韓国のメーカーが優位に立っており、日本メーカーは差別化が課題となっている。
一方で、EVシフトは新たなビジネスチャンスも生み出している。例えば、V2H(Vehicle to Home)やV2G(Vehicle to Grid)といった、EVを電力貯蔵装置として活用するシステムの需要が拡大しており、関連する部品やシステムの市場が成長している。また、自動運転技術の進展に伴い、センサーや半導体、ソフトウェアなど、新たな部品需要も生まれている。
部品メーカー各社は、これらの変化をチャンスと捉え、積極的な投資と事業構造の転換を進める必要がある。生き残りをかけた競争は、今後さらに激化すると予想される。



