電気自動車(EV)への移行が自動車産業のサプライチェーンを根底から揺るがしている。従来のエンジン車に比べ、EVの部品点数は約3分の1に減少するとされ、特にエンジンやトランスミッションなど駆動系部品を主力とするメーカーは、事業存続の岐路に立たされている。業界関係者によれば、エンジン関連部品の市場は2030年までに半減する可能性があるという。
部品点数の減少がもたらす衝撃
EVの構造はシンプルで、主要な可動部品はモーターとバッテリー、そしてインバーター程度。従来のガソリン車に必要な燃料ポンプ、点火プラグ、排気系部品などは不要になる。ある部品メーカーの幹部は「当社の売上高の7割がエンジン関連。このままでは10年後に会社はない」と危機感をあらわにする。
大手自動車メーカーも部品調達の見直しを進めており、従来の系列を超えた調達が加速。例えば、トヨタ自動車はEV向けに中国のCATL(寧徳時代新能源科技)からバッテリーを調達するなど、サプライチェーンはグローバルに再編されつつある。
部品メーカーに求められる変革
こうした環境下で、部品メーカーには二つの選択肢がある。一つはEV関連部品へのシフト。モーター用の磁石やインバーター用のパワー半導体、軽量化素材など、需要が拡大する分野に投資する。もう一つは、既存技術の高度化による「生き残り」。例えば、エンジンの熱効率を極限まで高める技術や、ハイブリッド車向けの高度な制御システムなど、当面は需要が残る領域で差別化を図る。
実際に、デンソーはガソリンエンジン向け部品の生産を縮小し、EV向けの熱管理システムやセンサーに注力する方針を表明。また、アイシン精機(現アイシン)はトランスミッション事業を縮小し、電動駆動モジュールの開発に資源を集中している。
生き残りをかけたM&Aと協業
業界再編も進む。小規模な部品メーカーは単独での生き残りが難しく、大企業との資本提携やM&Aの対象となるケースが増えている。例えば、エンジンバルブメーカーのリケンは、EVシフトを見据えて水素エンジン向け部品の開発を進めるが、研究開発費の負担は重い。こうした中で、業界団体は政府に対して電動化対応のための補助金や税制優遇を要望している。
一方で、完全なEVシフトにはインフラ整備や電池コストなど課題も多く、過渡期にはハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の需要が続くとの見方もある。部品メーカーには、複数のパワートレインに対応できる柔軟な生産体制が求められている。
地域経済への影響と対策
自動車部品産業は多くの地域で雇用を支えてきた。例えば、愛知県や静岡県、岐阜県などでは、部品メーカーの従業員数が全雇用の1割を超える地域もある。EVシフトによる雇用喪失を防ぐため、自治体は産業転換支援や職業訓練の拡充に乗り出している。経済産業省も「自動車産業の電動化に関するタスクフォース」を設置し、サプライチェーン全体の移行を支援する方針だ。
しかし、時間は限られている。ある業界アナリストは「部品メーカーが生き残るためには、3年以内に具体的な事業転換計画を策定し、実行に移す必要がある」と指摘する。技術開発のスピードと、変化を恐れない経営判断が、これまで以上に問われている。



