EVシフト加速、トヨタの水素戦略に黄信号? 脱炭素の主役争い
EVシフト加速、トヨタの水素戦略に黄信号?

トヨタの水素戦略が岐路に

トヨタ自動車が長年推進してきた水素燃料電池車(FCV)戦略が、世界的なEVシフトの加速によって岐路に立たされている。脱炭素社会の実現に向け、各国政府が電気自動車(EV)への補助金や規制を強化する中、水素自動車の存在感は相対的に低下している。

トヨタは2014年に世界初の量産型FCV「MIRAI」を発売し、水素社会の実現に向けたパイオニアとしての地位を築いてきた。しかし、販売台数は2023年までに全世界で約2万5000台にとどまり、EVの普及ペースには大きく及ばない。一方、EVは2023年の世界販売台数が約1000万台に達し、市場の主役としての地位を確立しつつある。

水素インフラ整備の遅れが課題

水素自動車の普及には、水素ステーションなどのインフラ整備が不可欠だが、その進捗は遅れている。日本国内では2024年時点で約170カ所の水素ステーションが稼働するが、ガソリンスタンドの約3万カ所と比べると圧倒的に少ない。また、水素の製造コストや輸送コストも高く、経済的な課題が残る。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

トヨタは水素を「究極のエコ燃料」と位置づけ、乗用車だけでなく大型トラックやバス、フォークリフトなどへの展開を進めている。しかし、欧州連合(EU)が2035年までにガソリン車の新車販売を事実上禁止する方針を示すなど、EVシフトが加速する中で、水素自動車の市場は限定的にならざるを得ないとの見方が強い。

EVシフトの加速で水素の役割見直しへ

国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、2023年の世界のEV販売台数は前年比35%増の約1000万台に達し、新車販売に占める割合は約18%となった。一方、水素自動車の販売台数は約1万5000台と低迷している。この差は今後さらに拡大すると予想される。

専門家の間では、水素自動車は乗用車よりも、バッテリーの重量や充電時間が課題となる大型商用車や船舶、鉄道などでの活用が現実的との指摘がある。トヨタも近年は商用車向けの水素エンジン開発に注力しており、戦略の見直しを進めている可能性がある。

トヨタのマルチパスウェイ戦略

トヨタはEV、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、FCVなど多様なパワートレインを用意する「マルチパスウェイ戦略」を掲げている。この戦略は地域のエネルギー事情やインフラ整備状況に応じて最適な技術を提供するというものだが、EVシフトが加速する中で、水素技術の位置づけが問われている。

トヨタの豊田章男会長はこれまで「EV一辺倒」の流れに警鐘を鳴らしてきたが、2023年にはEV専用工場の設立を発表するなど、EV戦略を強化している。しかし、水素技術への投資も継続しており、2025年には次世代FCVの投入を計画している。

水素の将来性と課題

水素は燃焼時に二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして注目されているが、製造時に化石燃料を使用する場合が多く、グリーン水素の普及には再生可能エネルギーの拡大が不可欠だ。また、水素の貯蔵や輸送には高圧タンクや液化設備が必要で、コスト面での課題が残る。

日本政府は2023年に水素基本戦略を改定し、2040年までに年間約1200万トンの水素供給を目指すとしている。しかし、自動車分野ではEVが主流となり、水素は航空機や船舶、産業用などでの活用が中心になるとの見方が強い。

トヨタの水素戦略は、技術的な優位性を持ちながらも、市場の変化に対応した柔軟な戦略が求められている。脱炭素社会の実現には多様な技術が必要であり、水素が果たす役割は依然として重要だが、その主戦場は変わりつつある。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ