電気自動車(EV)へのシフトが世界的に加速する中、自動車部品業界はかつてない変革を迫られている。エンジンやトランスミッションなど内燃機関向け部品の需要が減少する一方、モーターやバッテリー、パワーエレクトロニクスといったEV向け部品の需要が急拡大。部品大手各社は、事業ポートフォリオの抜本的な転換を迫られている。
部品大手、EV向け投資を加速
デンソーは2025年度までにEV・電動化関連への投資を1兆円規模に拡大すると発表。同社はエンジン部品で世界トップシェアを誇るが、EV化の進展により中核事業の縮小は避けられない。同社の担当者は「電動化は大きなチャンス。バッテリー管理システムや熱マネジメント技術で競争力を高める」と語る。
また、アイシンもEV向けeアクスル(駆動ユニット)の生産能力を2025年までに現在の3倍に引き上げる計画。同社はトランスミッションで強みを持つが、EV化に伴い需要が減る部品からのシフトを急ぐ。
サプライチェーンの再編不可避
EV化は部品点数を大幅に減らす。エンジン車では約3万点の部品が必要とされるが、EVでは約2万点に減少。特にエンジンや排気系、燃料系の部品メーカーには厳しい影響が出ている。ある中堅部品メーカーの幹部は「従来の主力製品の受注が減少し、新たな収益源の開拓が急務だ」と打ち明ける。
一方、バッテリーやモーターなど新たな領域では、素材メーカーや電機メーカーなど異業種からの参入も相次ぐ。従来の自動車部品サプライチェーンは大きく再編されつつある。
脱炭素対応と収益確保のジレンマ
各国の環境規制強化も部品メーカーに重くのしかかる。欧州連合(EU)は2035年までにガソリン車の新車販売を事実上禁止する方針。日本政府も2035年までに新車販売を全て電動車とする目標を掲げる。これに対応するため、部品メーカーは生産工程でのCO2排出削減も求められている。
しかし、EV向け部品への転換には巨額の投資が必要で、収益化には時間がかかる。日本自動車部品工業会の調査によると、2023年度の部品メーカーの設備投資額は前年度比15%増の1兆8000億円に達する見込み。利益率の低下に直面する企業も少なくない。
海外市場での競争激化
中国市場ではEVの普及が急速に進み、現地部品メーカーの台頭が著しい。日本メーカーは品質や技術力で優位性を持つが、価格競争では劣勢に立たされる場面も増えている。ある日系部品メーカーの中国駐在員は「中国メーカーの技術力は急速に向上しており、従来のような差別化は難しい」と指摘する。
こうした中、日本政府は2023年6月に「自動車部品産業戦略」を策定。EV化に対応した部品の開発支援やサプライチェーンの強靱化を図る方針だ。具体的には、次世代バッテリーや水素関連技術への補助金拡充が盛り込まれた。
生き残りをかけたM&Aと提携
部品業界ではM&Aや資本提携も活発化している。デンソーは2023年、米半導体大手と車載半導体の共同開発で合意。アイシンも独部品大手とEV向け駆動ユニットの生産で提携した。専門家は「単独で全ての技術を開発するのは困難。選択と集中が不可避」と分析する。
自動車部品業界は100年に一度の変革期にある。EVシフトの加速は、生き残りをかけた構造改革を部品メーカー各社に強いている。脱炭素と収益の両立、そして新たな競争環境への適応が、今後の命運を分けることになる。



