EVシフトで部品大手が生き残りへ再編
電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車部品業界で再編の動きが相次いでいる。従来のエンジン車向け部品に依存してきた大手メーカーは、EV向け事業への転換を迫られており、M&A(合併・買収)を通じて規模拡大や技術獲得を急いでいる。
例えば、デンソーは2024年、EV向けパワートレイン部品の開発を強化するため、複数のスタートアップ企業を買収した。同社の担当者は「EVシフトは予想以上のスピードで進んでおり、従来のビジネスモデルだけでは生き残れない」と語る。
再編の背景にある構造変化
自動車部品業界の再編は、EVシフトによる需要構造の変化が主因だ。エンジンやトランスミッションなど内燃機関関連の部品は減少し、バッテリーやモーター、インバーターなど電動化部品の需要が急増している。このため、多くの部品メーカーは事業ポートフォリオの見直しを迫られている。
また、EVの生産台数は世界で2023年に約1000万台に達し、2030年には3000万台を超えるとの予測もある。こうした市場拡大に対応するため、部品メーカーは規模の経済を追求し、競争力を高める必要がある。
M&Aで技術と規模を獲得
実際、業界大手の間ではM&Aが活発化している。住友電気工業は2024年、EV用ワイヤーハーネス事業を強化するため、欧州の同業他社を買収した。買収額は非公表だが、関係者によると数百億円規模とみられる。同社は「EV向け部品の売上高を2025年までに現在の2倍に引き上げる」目標を掲げる。
一方、日本発条はEV用バッテリーケースの生産能力増強を目的に、国内の金属加工メーカーを傘下に収めた。これにより、EV向け部品の供給体制を強化し、顧客である自動車メーカーの需要に応える狙いだ。
中小部品メーカーの苦境
再編の動きは大手だけでなく、中小部品メーカーにも広がっている。EVシフトに対応するための投資負担が重く、単独での生き残りが難しいためだ。ある中小部品メーカーの経営者は「大手との協業やM&Aがなければ、数年後には事業継続が困難になる」と打ち明ける。
実際、2023年には自動車部品業界で倒産や事業譲渡が相次ぎ、その数は前年比で約20%増加した。帝国データバンクの調査によると、2024年も同様の傾向が続くとみられる。
業界再編の行方
こうした動きは、自動車部品業界の地図を大きく塗り替える可能性がある。生き残りをかけたM&A競争は今後も激化し、業界全体の効率化が進む一方、技術革新のスピードも加速するとみられる。アナリストは「今後5年で業界の再編が一気に進み、現在の大手メーカーのうち数社は姿を消すかもしれない」と指摘する。
自動車業界全体が100年に一度の変革期を迎える中、部品メーカーの生き残りをかけた戦いはまだ始まったばかりだ。



