電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車部品業界で大規模な再編の動きが顕在化している。特にトヨタ自動車の系列下にある部品大手各社は、EV向け部品への生産シフトと従来型エンジン部品の縮小を同時に進めており、サプライチェーンの構造変革が本格化している。
トヨタ系部品大手の戦略転換
トヨタグループの中核部品メーカーであるデンソーは、2025年までにエンジン関連部品の生産能力を2割削減する方針を打ち出した。一方で、EV向けの電動化ユニットや半導体関連の投資を拡大しており、2024年度の研究開発費は過去最高の6000億円を見込む。同社の広報担当者は「EVシフトは想定以上のスピードで進んでおり、従来型部品からの撤退を加速する必要がある」と説明する。
また、豊田自動織機は、フォークリフトやエンジン部品に加え、EV用の駆動モジュールの生産を強化。2023年には愛知県内の工場に新たなEV部品ラインを設置し、2025年までに生産能力を3倍に引き上げる計画だ。同社は「EV化は商用車にも波及しており、多様なニーズに応える製品群が必要」とコメントしている。
子会社統合と雇用への影響
再編の動きは子会社レベルでも進んでいる。トヨタ系部品メーカーのアイシンは、2024年4月に子会社2社を吸収合併し、EV向け駆動ユニットの開発・生産を一元化すると発表した。これにより、重複する管理部門を統合し、年間100億円のコスト削減を見込む。一方で、統合に伴う人員削減は「現時点では計画していない」としているが、業界団体の調査によれば、自動車部品業界全体で2030年までに国内で約3万人の雇用が減少する可能性が指摘されている。
雇用への影響を懸念する声もある。労働組合の幹部は「EVシフトは避けられないが、従業員の再教育や配置転換を丁寧に行う必要がある」と述べ、企業側に雇用維持を求めている。実際、デンソーは2023年から社内でEV関連のリスキリングプログラムを開始し、2025年までに約1万人の社員が受講する目標を掲げている。
中小部品メーカーへの波及
再編の波はトヨタ系だけでなく、中小部品メーカーにも及んでいる。ある中小部品メーカーの社長は「主要取引先からのEV部品への切り替え要請が増えており、対応できない企業は淘汰されるだろう」と危機感をあらわにする。経済産業省の統計によると、国内の自動車部品メーカーの約7割が従来型エンジン部品に依存しており、EVシフトへの対応が急務となっている。
政府も支援策を打ち出しており、2024年度補正予算では中小部品メーカーのEV転換に向けた設備投資補助金として500億円を計上している。しかし、申請件数は想定を下回っており、現場の準備不足が浮き彫りになっている。
今後の展望
トヨタ自動車自体も、EV戦略を加速させている。2026年までにEVの世界販売台数を150万台に引き上げる目標を掲げ、そのための部品調達体制の再構築を進めている。トヨタの調達担当役員は「サプライヤーと協力してEV対応を進めるが、競争力のない企業との取引は見直す」と述べ、系列関係の見直しも示唆している。
自動車部品業界の再編は、EVシフトの進展とともにさらに加速するとみられる。特に、中国や欧州のEVメーカーが低価格車を投入する中、部品コストの削減は日本の自動車産業の競争力維持に不可欠だ。業界アナリストは「今後5年で部品メーカーの数は3割減る可能性がある」と予測しており、生き残りをかけた競争が激化している。



