EVシフト加速でガソリン車の未来は?2035年問題の現実
EVシフト加速でガソリン車の未来は?2035年問題

世界の自動車業界で電気自動車(EV)への移行が急速に進んでいる。欧州連合(EU)や日本などが掲げる2035年までのガソリン車新車販売禁止目標は、自動車メーカーにとって大きな転換点となる。この「2035年問題」は、技術開発、サプライチェーン、雇用構造に至るまで、業界全体に変革を迫っている。

各国の規制と自動車メーカーの対応

EUは2035年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする新車のみ販売を認める方針を決定した。日本政府も2035年までに新車販売を全て電動車(EV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、ハイブリッド車)とする目標を掲げている。これに対し、トヨタ自動車はハイブリッド車(HV)や水素エンジン車を含むマルチパスウェイ戦略を堅持。一方、日産自動車は2030年までに欧州での新車販売を全てEVにする方針を表明するなど、各社の戦略は分かれている。

世界のEV販売台数は2023年に約1400万台と前年比35%増加し、新車販売に占める割合は約18%に達した。特に中国市場ではEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の販売が急伸し、2023年の販売台数は約950万台と世界全体の7割近くを占める。

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充電インフラの整備状況と課題

EV普及の最大の障壁の一つが充電インフラの不足だ。日本では2023年末時点で公共用充電器が約4万基と、政府目標の2030年までに30万基には遠く及ばない。欧州や中国では急速充電器の整備が進むが、日本では家庭用充電に依存する割合が高い。経済産業省は2024年度から充電器設置補助金を拡充し、高速道路のサービスエリアや商業施設への設置を促進する方針だ。

また、充電規格の統一も課題だ。日本では「CHAdeMO」方式が主流だったが、世界的にはテスラの「NACS」や中国規格の「GB/T」が広がっており、日本メーカーも対応を迫られている。

バッテリー調達とサプライチェーンの再編

EVの心臓部であるリチウムイオン電池の需要が急増し、原材料の確保が重要課題となっている。リチウム、コバルト、ニッケルなどの資源は特定国に偏在し、中国が精製工程で大きなシェアを占める。日本政府は経済安全保障の観点から、蓄電池の国内生産体制強化を進め、トヨタやパナソニックなどが北米や日本での電池工場建設を発表している。

さらに、使用済み電池からのリサイクル技術の開発も急務だ。2030年以降、大量の廃電池が発生すると見込まれ、資源の再利用と環境負荷低減の両立が求められる。

雇用への影響と産業構造の変化

EVシフトは雇用にも大きな影響を与える。エンジンやトランスミッションなど内燃機関関連の部品点数はEVでは約3分の1に減少するとされ、部品メーカーの事業転換や雇用調整が避けられない。経済産業省の試算では、2030年までに自動車関連雇用の約14%にあたる約13万人が影響を受ける可能性がある。一方で、ソフトウェア開発や電池関連など新たな分野での雇用創出も期待される。

政府は2024年度から「自動車産業の構造転換に向けた人材育成事業」を開始し、部品メーカー従業員のリスキリングを支援する。

消費者の受け止めと今後の展望

消費者の間ではEVへの関心は高まるものの、価格の高さや航続距離への不安、充電インフラの不足などから購入に慎重な声も多い。2024年の日本自動車工業会の調査では、「次回購入時にEVを検討する」と答えた消費者は約3割にとどまる。

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自動車評論家の森口将之氏は「EVシフトは不可避だが、ガソリン車が完全になくなるわけではない。地域や用途に応じてHVやプラグインハイブリッド、水素車など多様な選択肢が共存するだろう」と指摘する。また、トヨタの豊田章男会長は「全てをEVにすることは現実的ではない。雇用やエネルギー事情を考慮した段階的な移行が必要だ」と述べている。

2035年問題は単なる規制の目標ではなく、自動車産業の百年に一度の変革を象徴する。技術革新と社会受容のバランスをどう取るかが、日本の自動車産業の未来を左右する。