電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車部品サプライヤーは深刻な収益悪化に直面している。特にエンジンやトランスミッションなど内燃機関関連部品を主力とする企業は、需要の急減により存続の危機に立たされている。
エンジン部品需要の激減
日本自動車部品工業会の調査によると、2023年度のエンジン関連部品の生産額は前年度比15%減の約2兆円となり、2019年度比で30%以上減少した。一方で、EV用モーターやインバーターなどの電動化部品の生産額は同40%増の約1兆2000億円に拡大している。
「エンジン部品だけで年間売上高の6割を占めていた当社にとって、この変化は死活問題だ」と、ある中小部品メーカーの社長は語る。同社は従業員300人規模で、主要取引先からの受注が前年比で半減しているという。
大手サプライヤーの対応
デンソーやアイシンなどの大手サプライヤーは、電動化投資を加速している。デンソーは2025年度までに電動化関連に5000億円を投じ、EV向け製品の売上高を2020年度比で3倍に引き上げる計画だ。アイシンは2024年度に電動駆動モジュールの生産能力を前年比50%増強する。
しかし、こうした投資は体力のある大手に限られる。中小企業には巨額の投資は難しく、政府の補助金も限定的だ。経済産業省は2023年度補正予算でサプライヤーの事業転換支援に100億円を計上したが、業界団体は「焼け石に水」と指摘する。
業界再編の不可避性
専門家は、サプライヤー間の再編が不可避とみる。みずほリサーチ&テクノロジーズのシニアエコノミストは「今後5年で部品メーカーの3割が事業縮小や撤退を迫られる可能性がある。特にエンジン部品に特化した中小企業は厳しい」と分析する。
実際、2023年には岐阜県の金属加工会社がエンジン部品の受注減少を理由に事業を停止した。また、愛知県の部品メーカーはEV向け部品への転換を断念し、他社への売却を検討している。
EVシフトの地域経済への影響
サプライヤーの危機は地域経済にも波及する。自動車部品産業は全国に約1万社あり、雇用者数は約90万人。特に愛知県や静岡県など中部地方では地域経済の核となっている。愛知県の担当者は「サプライヤーの廃業が相次げば、雇用喪失や税収減など地域経済に深刻な打撃となる」と懸念する。
政府は2024年度からサプライヤーの電動化転換を支援する新たな補助金制度を導入する方針だが、抜本的な対策にはならないとの声も多い。
今後の展望
業界では、生き残りをかけたM&Aや業務提携が活発化すると予想される。また、一部のサプライヤーは自動車以外の分野への多角化を進める。例えば、エンジン部品の精密加工技術を活かして医療機器や航空宇宙部品に参入する動きもある。
「EVシフトは避けられない。われわれも技術を磨き、新たな市場を開拓するしかない」と前出の社長は語る。しかし、時間は限られている。



