タイ自動車市場に激震、EVシフトで中国勢が躍進
タイの自動車市場で電気自動車(EV)シフトが急速に進み、中国メーカーが販売台数を急増させている。2023年のタイ新車販売におけるEV比率は約10%に達し、中国のBYD(比亜迪)が首位に立つなど、日本メーカーを脅かす存在となっている。
タイは東南アジア最大の自動車生産・輸出拠点であり、長年にわたりトヨタ自動車やホンダなど日本メーカーが市場を支配してきた。しかし、EVシフトの波はタイにも押し寄せ、中国政府の強力な支援を受ける中国メーカーが低価格EVを投入、販売網を拡大している。
2023年のEV販売、中国勢が上位独占
タイ自動車協会のデータによると、2023年のタイ新車販売台数は約84万台で、うちEVは約8万5000台。EV市場ではBYDが約3万台でトップ、続いて上海汽車(SAIC)のMGブランドが約1万8000台、中国の合衆新能源汽車(Neta)が約1万2000台と、中国勢が上位3位を独占した。日本勢では日産自動車がわずか約2000台で4位、トヨタは約1000台で5位にとどまった。
「タイのEV市場は中国メーカーが主導権を握っている。日本メーカーはハイブリッド車(HV)に強みを持つが、EVでは出遅れた」と、タイの自動車アナリスト、タナワット・ポンタム氏は指摘する。
日本メーカーの苦戦、HVからEVへの転換急務
日本メーカーはタイでHVやガソリン車で高いシェアを維持しているが、EVでは中国勢に大きく水をあけられている。トヨタは2022年にタイでEV生産を開始したが、販売は低調。ホンダはEV投入を計画しているが、本格的な量産は2024年以降になる見通しだ。
「日本メーカーはHV技術では世界をリードしてきたが、EVに関しては中国勢の後塵を拝している。タイ政府がEV普及を後押しする政策を打ち出しているだけに、日本勢の巻き返しが急務だ」と、バンコク在住の自動車ジャーナリスト、スパチャイ・プーンタラット氏は語る。
タイ政府のEV推進政策と中国勢の優位性
タイ政府は2030年までに新車販売の30%をEVにする目標を掲げ、購入補助金や輸入関税の引き下げなど、EV普及策を推進している。中国メーカーはこうした政策を追い風に、タイ国内でEV生産拠点を相次ぎ建設。BYDは2024年にタイ工場の稼働を開始予定で、MGも現地生産を拡大している。
一方、日本メーカーはタイでのEV生産に慎重姿勢で、政府の補助金対象となる車種も限られている。日本勢がEVシフトに本腰を入れなければ、タイ市場での優位性を失う恐れがある。
日本メーカーの巻き返し戦略
日本メーカーはHVやプラグインハイブリッド車(PHV)で差別化を図りつつ、EV投入を加速する計画だ。トヨタは2024年にタイで新型EVを発売、ホンダも2025年までにEVラインアップを拡充する方針。また、日産は2024年にタイでEVの現地生産を開始すると発表している。
しかし、中国勢の価格競争力や政府支援の厚さを考えると、日本勢の巻き返しは容易ではない。タイのEV市場で生き残るためには、日本メーカーはより積極的な投資と戦略的な提携が求められる。



