東南アジアの自動車市場で、電気自動車(EV)シフトが急速に進んでいる。従来、日本メーカーが支配してきたこの地域で、中国EVメーカーが猛攻勢をかけ、市場構造が大きく変わりつつある。2023年の東南アジアにおけるEV販売台数は約13万4000台に達し、前年比で約3.5倍に拡大した。そのうち、中国ブランドのシェアは75%を占め、日本メーカーはわずか1%にとどまった。
タイ市場で中国勢が躍進
最大のEV市場であるタイでは、2023年のEV販売台数が7万6000台を超え、前年の約3倍となった。首位は中国のBYD(比亜迪)で、シェアは約30%。2位には同じく中国の合衆新能源汽車(Neta)が続き、中国勢が上位を独占した。日本メーカーではトヨタがわずか3%のシェアで5位に甘んじている。
タイ政府はEV普及に積極的で、購入補助金や輸入関税の引き下げなどの優遇策を打ち出している。これにより、中国メーカーは低価格帯のEVを投入し、消費者の需要を捉えている。BYDの主力モデル「ATTO 3」は、タイでの販売価格が約120万バーツ(約500万円)と、同クラスのガソリン車と同等かそれ以下に設定されている。
日本メーカーの苦戦と戦略転換
日本メーカーは東南アジアで長年、高いシェアを誇ってきたが、EVシフトで出遅れている。トヨタは2022年にタイでEV「bZ4X」を発売したが、販売は低迷。日産は「リーフ」を投入しているが、価格競争で中国勢に劣る。ホンダは2024年にEVの投入を予定するが、現時点ではシェアを伸ばせていない。
日本メーカーの強みはハイブリッド車(HV)にある。トヨタはタイでHVの生産を拡大しており、2023年のHV販売は前年比30%増加した。しかし、EVシフトが加速する中で、HVだけでは市場の変化に対応しきれないとの見方もある。
中国メーカーの現地生産戦略
中国メーカーは単なる輸出にとどまらず、東南アジアでの現地生産を積極的に進めている。BYDはタイに工場を建設中で、2024年から年間15万台の生産を開始する予定。また、長城汽車(GWM)はタイとインドネシアで生産拠点を持つ。これにより、関税コストを削減し、さらなる価格競争力の向上を狙う。
さらに、中国メーカーは東南アジア諸国との自由貿易協定(FTA)を活用し、部品の調達や販売網の構築を進めている。これに対し、日本メーカーはタイやインドネシアでの生産拠点を既に持つが、EV向けのサプライチェーン構築は遅れている。
今後の展望と課題
東南アジアのEV市場は今後も成長が見込まれ、2025年には年間販売台数が50万台に達するとの予測もある。中国メーカーはさらなるシェア拡大を狙い、日本メーカーは巻き返しを図る。トヨタは2026年までに東南アジアで10車種以上のEVを投入する計画を発表した。
しかし、課題も多い。充電インフラの整備は遅れており、タイでは公共充電器が約1万基と、EV台数に対して不足している。また、電力の安定供給や、バッテリーのリサイクル体制の構築も必要だ。さらに、中国メーカーの急速な進出に対して、現地政府が保護主義的な措置を取る可能性もある。
東南アジア自動車市場の勢力図は、今後数年で大きく塗り替えられるだろう。日本メーカーがEVシフトにどう対応するかが、地域での生き残りを左右する鍵となる。



