東南アジアの電気自動車(EV)市場で、販売の伸びが鈍化している。2024年上半期のEV販売台数は前年同期比で約15%増にとどまり、2023年の急成長から減速した。背景には、補助金の縮小や充電インフラの未整備、消費者の購買意欲低下がある。
中国勢がシェア拡大、日系はHVで巻き返し
市場減速の中、中国のEVメーカーが攻勢を強めている。比亜迪(BYD)はタイで販売台数トップに立ち、2024年上半期のシェアは約30%に達した。一方、日系メーカーはハイブリッド車(HV)を軸に巻き返しを図る。トヨタはタイでHVの新モデルを投入し、2025年までにHV販売を倍増させる計画だ。
業界アナリストは「東南アジアではHVが当面の主流になる可能性が高い」と指摘する。EVは価格が高く、充電インフラが不十分なため、消費者はHVを選ぶ傾向にある。
タイ政府、EV生産拠点化を推進
タイ政府はEV生産拠点としての地位確立を目指し、外資系メーカーに優遇措置を提供している。BYDや中国の長城汽車はタイで工場を稼働させており、2025年までに年間生産能力を10万台以上に引き上げる計画だ。これに対し、日系メーカーは既存のHV生産ラインを活用し、EVへの段階的な移行を模索している。
しかし、EV販売の鈍化はタイ政府の目標に影を落とす。2030年までに新車販売の30%をEVにする目標は、現状のペースでは達成が難しいとの見方もある。
インドネシア、資源活用でEV市場開拓
インドネシアはニッケル資源を活用し、EVバッテリー生産で存在感を示す。同国政府はEV購入補助金を拡充し、2024年のEV販売台数は前年の2倍以上となる見込みだ。中国のCATLや韓国のLGエナジーソリューションがバッテリー工場を建設中で、2025年には生産が始まる予定である。
一方、インドネシアでもHV人気は根強く、トヨタのHV車種が販売ランキング上位を占める。専門家は「インドネシアはEVとHVの二層市場になる」と予測する。
ベトナム、国内メーカーの挑戦
ベトナムでは国内メーカーのビンファストがEV市場を牽引する。同社は2024年に新型EVを投入し、国内販売に加え、米国や欧州への輸出を強化している。しかし、販売台数は伸び悩んでおり、2024年上半期の販売は計画の半分にとどまった。
ビンファストの課題は価格競争力とブランド認知度だ。中国勢の低価格EVに対抗するため、同社はコスト削減に取り組んでいる。
今後の展望:HVとEVの共存
東南アジアの自動車市場は、HVとEVが共存する過渡期にある。日系メーカーはHVで優位を保ちつつ、EV開発を進める。中国勢は低価格EVで攻勢をかけるが、充電インフラの整備が鍵となる。地域全体では、2030年までに新車販売の20〜30%がEVになると予想されるが、HVの比率も高い水準で推移するだろう。



