世界の電気自動車(EV)市場で販売鈍化が顕著になる中、日本の自動車メーカー各社の戦略に変化が生じている。トヨタ自動車はハイブリッド車(HV)に注力する戦略が奏功し、好調な業績を維持している。一方、日産自動車や本田技研工業(ホンダ)は、EVシフトの見直しを迫られ、競争力の再構築が課題となっている。
EV市場の減速と日本勢への影響
国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、2024年の世界のEV販売台数は前年比で+20%と、2023年の+35%から成長率が低下した。特に欧州では補助金削減や充電インフラ不足が響き、販売が伸び悩んでいる。米国でもテスラの販売が鈍化し、フォードやGMはEV投資計画を縮小している。
こうした環境下で、日本勢は異なる対応を見せている。トヨタはHVの需要が依然強いと判断し、2025年までにHVのラインアップを拡充する方針だ。トヨタの2024年度第2四半期決算では、営業利益が前年同期比+12%増の1.2兆円となり、その多くをHVが牽引した。トヨタの広報担当者は「HVは現実的な脱炭素ソリューションとして、顧客から支持を得ている」と述べている。
日産とホンダ、EV戦略の見直し
一方、日産はEVに積極的に投資してきたが、販売鈍化を受け、2025年以降のEV投入計画を一部延期する方針を固めた。日産の内田誠社長は「市場の変化に合わせ、柔軟に対応する」とコメント。具体的には、2026年に発売予定だった中型EVセダンの投入を2027年に延期する。また、ホンダも2024年に北米で発売したEV「プロローグ」の販売が目標を下回り、2025年の生産台数を当初計画から20%削減することを決定した。
ホンダの三部敏宏社長は「EVシフトは不可避だが、タイミングを見極める必要がある」と述べ、HVとEVの両軸で対応する方針を示した。ホンダは2025年に新型HVを投入する予定で、研究開発費の配分を見直す。
HV戦略の強みと課題
トヨタのHV戦略の強みは、コスト競争力にある。トヨタはHVのシステムを内製化し、部品点数を削減することで、他社より低コストでHVを生産できる。また、HVの燃費性能も向上しており、最新のHVはEVと遜色ないCO2削減効果を実現している。トヨタは2025年までにHVの年間販売台数を500万台に引き上げる計画だ。
しかし、長期的にはEVシフトが進むとの見方も強い。欧州連合(EU)は2035年までに内燃機関車の新車販売を禁止する方針を維持しており、中国でもEVの普及が加速している。トヨタがHVに固執すれば、将来の競争力を失うリスクがある。アナリストからは「トヨタはHVで稼いだ資金をEVや水素技術に投資し、バランスを取るべきだ」との指摘もある。
日本勢の生き残り戦略
日本勢全体としては、EV販売鈍化が一時的なものか、構造的な変化かを見極める必要がある。日産とホンダはEV投資を縮小する一方、トヨタはHVで収益を確保しつつ、次世代バッテリーや水素エンジンの開発を進めている。日本自動車工業会のデータによると、2024年の日本の自動車輸出は前年比+5%増となったが、EVの輸出は-10%減少した。
市場調査会社のIHSマークイットは「2025年以降、EV市場は再び成長軌道に乗る」と予測するが、そのペースは従来の想定より緩やかになる見通しだ。日本勢は、HVとEVの最適なポートフォリオを構築し、変化する市場に適応することが求められている。



