世界的な電気自動車(EV)市場で販売の伸びが急減速している。2023年には前年比35%増と急成長したが、2024年は20%未満に鈍化する見通しだ。特に、市場をけん引してきたテスラや中国のEVメーカーに暗雲が立ち込めている。
テスラの販売が予想を下回る
テスラの2024年第1四半期の販売台数は約38万7000台で、前四半期比で8%減少した。これはアナリスト予想の45万台を大きく下回る。イーロン・マスクCEOは「競争の激化とマクロ経済の不透明感」を理由に挙げ、値下げ戦略を継続している。しかし、値下げによる販売促進効果は限定的で、利益率の低下が懸念されている。
中国EVメーカーも苦戦
中国市場でもEV販売の勢いが衰えている。比亜迪(BYD)は2024年第1四半期に約62万台のEVを販売したが、前四半期比で13%減少した。政府の補助金縮小や、競争激化による値下げ競争が収益を圧迫している。また、小米(シャオミ)や華為(ファーウェイ)などの新規参入も市場の過当競争に拍車をかけている。
在庫過剰と価格競争の悪循環
業界全体で在庫が積み上がっている。欧州では2023年末時点で約60万台のEV在庫が滞留しており、ディーラーは値引き販売を余儀なくされている。米国でも、テスラの値下げに追随する形で、フォードやGMがEV価格を引き下げた。この価格競争は、新興EVメーカーの収益を直撃し、いくつかの企業は資金調達に困難をきたしている。
政府の補助金縮小も影響
各国政府がEV購入補助金を縮小または廃止していることも販売減速の一因だ。ドイツでは2023年末に補助金を打ち切り、フランスも2024年から補助金対象を低所得者層に限定した。これにより、欧州でのEV需要が冷え込んでいる。日本でも、2024年度の補助金予算が前年度比で約3割減額され、普及の足かせとなっている。
充電インフラの整備遅れ
充電インフラの整備が需要に追いついていないことも、消費者の購入意欲を削いでいる。特に、集合住宅や長距離移動での充電環境の不備が課題だ。国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、2030年までに世界で約1200万基の充電器が必要とされるが、現在の設置ペースでは目標の半分にも達しない見通しだ。
今後の展望
市場関係者の間では、EV市場は一時的な調整局面にあるとの見方が強い。バッテリーコストの低下や新技術の投入により、中長期的には再び成長軌道に戻ると期待される。しかし、短期的には在庫調整と価格競争の激化が続き、特に新興メーカーの淘汰が進む可能性がある。



