欧州連合(EU)域内の自動車大手各社が、中国製電気自動車(EV)に対する関税強化をEU執行機関である欧州委員会に要請していることが明らかになった。関係筋によると、ステランティスやルノーなど複数のメーカーが、中国製EVの急増に対抗するため、現在の10%の関税を引き上げるよう求めているという。
EV販売低迷の実態
欧州自動車工業会(ACEA)のデータによると、2024年第1四半期のEU域内の新車販売に占めるEVの割合は12.5%で、前年同期の13.9%から低下した。ドイツでは2023年末にEV購入補助金が打ち切られ、販売が急減。2024年1-3月のEV販売台数は前年同期比で14.1%減の8万1000台となった。
欧州委員会の関係者は「域内メーカーから中国製EVに対する懸念が寄せられている。公正な競争環境を確保するため、関税措置を含むあらゆる選択肢を検討している」と述べた。
中国製EVの攻勢
中国のBYDや上海汽車などは、欧州市場で低価格EVを投入し、シェアを拡大している。2024年1-4月のEU域内での中国製EVの登録台数は前年同期比で23%増加し、市場シェアは8%に達した。特にBYDの「シール」は、テスラ「モデル3」より約20%安い価格設定で、消費者の関心を集めている。
欧州自動車大手の幹部は「中国メーカーは政府の支援を受けて安価なEVを大量に輸出している。このままでは欧州のEV産業が壊滅する恐れがある」と危機感を示した。
EUの対応と今後の展望
欧州委員会は2024年6月にも、中国製EVに対する追加関税の導入を発表する見通しだ。ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「中国の過剰生産能力が欧州市場に悪影響を及ぼしている。適切な措置を講じる」と述べている。
一方、中国商務省は「保護主義的な措置は自由貿易の原則に反する」と反発。報復関税も辞さない構えを見せており、貿易摩擦の激化が懸念される。
アナリストは「関税強化は短期的には欧州メーカーを保護するが、長期的にはEV普及の遅れや価格上昇につながる可能性がある」と指摘する。欧州自動車大手は、関税に頼らずに競争力を高めるための技術革新やコスト削減が求められている。



