中国の電気自動車(EV)最大手である比亜迪(BYD)が、日本市場で苦戦を強いられている。2023年の日本国内での販売台数は、年初に掲げた目標の3万台を大きく下回る見通しだ。同社は2023年1月に日本市場に本格参入し、1月31日には第1号モデル「ATTO 3」の販売を開始したが、その後販売は低調に推移している。
目標未達の背景にある課題
BYDの日本法人であるBYDジャパンの担当者によると、2023年の販売台数は「目標には届かない見込み」と認める。具体的な数字は明らかにされていないが、業界関係者の推計では、2023年1~11月の累計販売台数は約1,500台にとどまるとみられる。この数字は、当初計画した月間販売台数(約2,500台)の数分の一に過ぎない。
課題の一つはブランド認知の低さだ。日本ではトヨタやホンダなど国内メーカーが強固な地位を築いており、中国メーカーに対する消費者の信頼は依然として低い。また、販売網の整備が遅れていることも響いている。BYDは2025年までに100店舗の展開を目指すとしているが、2023年12月時点での店舗数は約50店舗にとどまる。
価格競争力も限定的
BYDの強みとされる低価格戦略も、日本市場では十分に機能していない。ATTO 3の価格は440万円(税込)で、日産のリーフ(約400万円)や海外メーカーのEVと比べて大きなアドバンテージにはなっていない。さらに、補助金制度の違いも影響している。日本政府のEV購入補助金は最大85万円だが、車両価格が高いと補助金額が減額される仕組みで、BYD車は補助金の上限額に近い価格帯にある。
また、充電インフラの不足も課題だ。日本では急速充電器の設置数が欧州や中国に比べて少なく、EV普及の障壁となっている。BYDは独自の充電ネットワークを持たないため、ユーザーは既存の充電インフラに依存せざるを得ない。
今後の展望と戦略
BYDは2024年に2車種目となる「ドルフィン」、3車種目「シール」の投入を予定しており、ラインアップの拡充で巻き返しを図る。ドルフィンはATTO 3よりも低価格(約360万円)で、より幅広い層にアピールできると期待される。また、2024年には新たに10店舗以上の開設を計画しており、販売網の拡大にも注力する。
自動車業界アナリストの山田一郎氏(仮名)は、「BYDが日本市場で成功するには、ブランドイメージの向上と販売網の拡充が不可欠だ。価格だけでなく、アフターサービスや充電インフラの整備も重要になる」と指摘する。さらに、日本独自のニーズに合わせた車両開発も求められる。
一方で、日本政府は2035年までに新車販売を全て電動車にする目標を掲げており、EV市場は拡大が見込まれる。BYDは中国市場で培ったコスト競争力と技術力を武器に、日本市場での存在感を高められるかが問われている。



