中国の電気自動車(EV)市場の成長鈍化が、世界最大の電池メーカーであるContemporary Amperex Technology(CATL)や比亜迪(BYD)などの大手に深刻な影響を及ぼしている。2024年、中国のリチウムイオン電池生産能力は推定需要の2倍に達し、業界全体で過剰生産と価格競争が激化している。
需要減速と生産能力のミスマッチ
中国汽車工業協会のデータによると、2024年上半期のEV販売台数は前年同期比で約20%増加したが、これは過去数年間の年平均成長率60%を大きく下回る。一方、電池メーカーは過去の需要急増を見越して大規模な生産能力拡大を進めてきた。その結果、業界全体の生産能力は2023年末時点で年間約1,200ギガワット時(GWh)に達し、2024年にはさらに1,500GWhを超える見通しだ。しかし、実際の需要は2024年で約700GWhにとどまると予想され、需給ギャップは拡大している。
この過剰供給により、電池価格は急落している。市場調査会社のデータによれば、リン酸鉄リチウム(LFP)電池の価格は2023年初めから2024年半ばまでに約40%下落し、1キロワット時(kWh)当たり約600元(約12,000円)まで低下した。CATLの2024年第2四半期の売上高は前年同期比で約5%減少し、純利益も同10%減となった。
価格競争の激化と業界再編
価格下落圧力は、中小メーカーを中心に経営を直撃している。2024年に入り、少なくとも5社の中国電池メーカーが生産停止や事業縮小を発表した。業界アナリストは「現在の価格水準では、コスト競争力のない企業は生き残れない」と指摘する。CATLやBYDのような大手は、規模の経済と垂直統合により一定の利益を維持しているが、それでも収益性は悪化している。
中国政府は過剰生産能力の是正に向けて、業界統合を促進する方針を示している。2024年5月、工業情報化省は新規の電池工場建設に対する規制を強化し、既存の生産能力の効率化を求めるガイドラインを発表した。これにより、業界再編が加速するとみられる。
海外市場へのシフト
国内市場の飽和を受け、中国の電池メーカーは海外展開を加速している。CATLはドイツとハンガリーに工場を建設中で、BYDもハンガリーに工場を計画している。しかし、欧州連合(EU)が中国製EVに対する追加関税を検討するなど、海外市場でも課題は多い。2024年6月、EUは中国製EVに対する相殺関税の予備的決定を発表し、最大38%の追加関税を課す可能性がある。これにより、電池の輸出にも影響が出る恐れがある。
技術革新と新たな成長分野
過剰生産と価格競争の中でも、技術革新は続いている。CATLは2024年に新型の「ナトリウムイオン電池」の量産を開始し、BYDは「ブレードバッテリー」の改良版を発表した。また、エネルギー貯蔵システム(ESS)向けの需要が急増しており、電池メーカーにとって新たな成長分野となっている。中国エネルギー貯蔵アライアンスによると、2024年の中国のESS市場規模は前年比50%増の約100GWhに達する見通しだ。
業界関係者は「短期的には過剰生産と価格競争が続くが、長期的には技術力とコスト競争力のある企業が生き残り、業界は健全な方向に進む」と語る。しかし、当面は中国電池業界にとって厳しい調整期間が続きそうだ。



