中国自動車メーカー、右ハンドル車市場に攻勢
中国の自動車メーカーが輸出促進策の一環として、右ハンドル車市場に狙いを定め始めた。6月18日に香港で開幕した「2026国際自動車・サプライチェーン博覧会(香港車博会)」では、BYD(比亜迪)、広州汽車集団(広汽集団)、吉利汽車(ジーリー)、一汽紅旗(FAW紅旗)、東風汽車や新興EV(電気自動車)メーカーの零跑汽車(リープモーター)などが相次いで新型の右ハンドル車を披露した。
零跑汽車の高級副総裁兼COO(最高執行責任者)を務める徐軍氏は、「中国の自動車会社にとって、香港で右ハンドル車の販売を成功させることができれば、グローバル展開を進めるうえでも大きな助けとなる」と述べ、香港を足がかりに広範な右ハンドル市場への輸出拡大を目指す意向を明らかにした。
香港は右ハンドル市場への橋頭堡
香港の年間新車販売台数は約4万~5万台と市場規模自体は限定的だ。しかし、中国の自動車メーカーにとって、香港は右ハンドル市場への進出の第一歩と位置づけられる。まず香港で消費者の反応や信頼性を検証し、市場からのフィードバックを基に製品を改良。そのうえで他の右ハンドル市場へ投入すれば、試行錯誤による余計なコストを抑えることが可能となる。
右ハンドル車の市場規模はEUを上回る。中国は欧州大陸諸国や米国と同じ左ハンドル車(右側通行)なのに対し、右ハンドル車(左側通行)の市場は英国(年間販売約200万台)、オーストラリア(約120万台)、日本(約450万台)、インド(約550万台)などが含まれる。これら4カ国の年間自動車販売台数は合計で1300万台強となり、EUの1080万台を上回る。さらにマレーシア、インドネシア、シンガポールも右ハンドル車市場だ。
EUの関税障壁が追い風に
日本など現地メーカーの強い市場や、インドなど高関税で輸入障壁の高い市場もあり、一概に有望とは言えない。しかし、EU市場では中国製EVに反補助金関税が課せられるなど輸出環境が厳しくなっている。そのため、他の海外市場の開拓は急務となっている。
BYDは2022年に香港の乗用車市場へ参入。香港の自動車博覧会が公式にまとめたデータによると、BYDは2025年に販売台数9751台、市場シェア27.1%を記録し、香港の自動車市場で販売首位に立った。同期間のテスラの販売台数は9193台で、シェア2位だった。
中国EV、香港市場で存在感
香港市場での成功は、中国自動車メーカーにとって右ハンドル車の品質と信頼性を示す好機となる。零跑汽車の徐軍氏は、香港での販売実績がグローバル展開の加速につながると強調する。中国メーカーは今後、右ハンドル車のラインアップを拡充し、英国やオーストラリア、日本、インドなどへの輸出を本格化させるとみられる。
一方、中国国内市場は減少が続く。中国自動車工業協会の統計によると、2025年の新車販売台数は前年比で減少しており、海外市場への依存度が高まっている。こうした背景から、中国自動車メーカーの右ハンドル車市場へのシフトは、生き残りをかけた戦略とも言える。



