中国政府は、電気自動車(EV)向けに広く使われるリン酸鉄リチウム(LFP)電池の輸出規制を強化する。商務省と工業情報化部は1月2日、LFP電池の製造技術や原材料の輸出に許可制を導入すると発表した。国家安全保障を理由に、特定の技術や製品の輸出を制限するもので、EV用電池のサプライチェーンに影響を与える可能性がある。
規制の対象と背景
規制の対象となるのは、LFP電池の製造技術、および主要な原材料である炭酸リチウムや水酸化リチウムなど。輸出業者は政府の許可を得る必要があり、許可なしの輸出は違法となる。中国は世界のリチウムイオン電池の約7割を生産しており、LFP電池ではさらに高いシェアを持つ。この規制は、中国の技術優位性を守り、国家安全保障上のリスクを防ぐ狙いがあるとされる。
商務省の報道官は「関連する技術や製品の輸出が国家安全保障に影響を与える可能性があるため、規制を強化する必要がある」と述べている。また、工業情報化部の担当者は「中国の電池産業の競争力を維持し、重要な技術の流出を防ぐことが目的だ」と説明した。
EV市場への影響
LFP電池は、コバルトを使用しないため、他のリチウムイオン電池よりも安価で安全性が高い。そのため、テスラや中国のEVメーカーが広く採用している。今回の規制強化により、海外のEVメーカーは調達コストの上昇や供給不足に直面する可能性がある。
業界関係者によると、中国のLFP電池メーカーは既に海外工場の建設を進めており、規制の影響を緩和しようとしている。例えば、寧徳時代(CATL)はドイツやハンガリーに工場を建設中で、比亜迪(BYD)も海外生産を計画している。しかし、これらの工場が本格稼働するまでには数年かかるとみられる。
国際的な反応
この動きに対して、米国や欧州連合(EU)は懸念を表明している。米国商務省の高官は「中国の輸出規制は、自由貿易の原則に反する」と批判した。一方、EUの貿易担当委員は「サプライチェーンの多様化を加速する必要がある」と述べ、中国への依存を減らす方針を示した。
専門家は、この規制が短期的には中国の電池メーカーに有利に働く可能性があるが、長期的には海外企業の中国離れを促すと指摘する。調査会社SNEリサーチのアナリストは「中国の規制強化は、韓国や日本の電池メーカーにとってチャンスになる。彼らはLFP電池の生産拡大を急ぐだろう」と述べている。



