EVシフト加速、中国がリチウム精製で世界支配へ
EVシフト加速、中国がリチウム精製で世界支配へ

電気自動車(EV)の普及が加速する中、リチウムイオン電池の主要原料であるリチウムの精製において、中国が世界市場を支配しつつある。国際エネルギー機関(IEA)のデータによれば、2022年時点で中国はリチウム精製能力の約60%を占めており、このシェアは今後さらに拡大する見通しだ。

中国のリチウム精製、世界シェア6割

リチウムは主にオーストラリアやチリ、アルゼンチンなどから産出されるが、精製工程は中国に集中している。オーストラリア産のリチウム鉱石の約9割が中国に輸出され、そこで高純度の水酸化リチウムや炭酸リチウムに加工されている。中国の精製能力は年々増強されており、2025年までに世界シェアが65%に達するとの予測もある。

この背景には、中国政府の戦略的な産業政策がある。中国は「新能源汽車産業発展計画」の下でEVと電池産業を国家戦略に位置づけ、リチウム精製工場への補助金や税制優遇措置を講じてきた。また、内需の拡大も精製能力向上を後押ししている。中国国内のEV販売台数は2022年に約688万台と前年比約93%増加し、世界最大のEV市場となっている。

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資源獲得競争が激化

リチウム需要の急増に伴い、中国企業は海外のリチウム鉱山への投資も積極化している。天斉リチウムや贛鋒リチウムなどの大手精製企業は、オーストラリアやチリ、アフリカの鉱山権益を取得し、原料の安定確保を図っている。一方、米国や欧州連合(EU)は中国への依存度低減を目指し、自国内での精製能力構築を急いでいる。米国はインフレ抑制法(IRA)に基づき、北米産のリチウムを使用した電池への補助金を手厚くするなど、サプライチェーンの多様化を推進している。

しかし、精製設備の建設には多額の投資と時間が必要であり、短期的に中国の支配力を覆すのは難しいと専門家は指摘する。米国のリチウム精製スタートアップ、ライアンテックのCEOは「中国の精製技術とコスト競争力は圧倒的だ。新規参入者が追いつくには5年以上かかるだろう」と語る。

環境問題と価格変動リスク

リチウム精製は大量の水とエネルギーを消費し、環境負荷が大きい。中国の精製工場では石炭火力発電に依存するケースが多く、二酸化炭素排出量の増加が懸念されている。また、リチウム価格は2021年から2022年にかけて約10倍に高騰した後、2023年には急落するなど、価格変動リスクも大きい。こうした不安定性は、EVメーカーのコスト計画に影響を与えている。

IEAのビロル事務局長は「リチウム供給の集中は、エネルギー安全保障上のリスクを生む。各国はリチウム精製能力の分散化とリサイクル技術の開発を急ぐべきだ」と警鐘を鳴らす。日本もJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じて、チリやオーストラリアでのリチウム権益取得を支援しているが、精製工程での中国依存は当面続くとみられる。

EVシフトが世界規模で進む中、リチウム精製を巡る地政学的な駆け引きは今後さらに激化しそうだ。

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