中国の電気自動車(EV)最大手である比亜迪(BYD)の欧州での販売が急減している。欧州連合(EU)が中国製EVに対する関税を引き上げたことが直撃し、2024年8月の新車登録台数は前年同月比で約70%減少した。この急激な落ち込みを受け、BYDは欧州市場での戦略修正を迫られている。
欧州販売の急減とその背景
欧州自動車工業会(ACEA)のデータによると、BYDの8月の欧州新車登録台数は約1,500台にとどまり、前年同月の約5,000台から大幅に減少した。この背景には、EUが7月に発動した中国製EVに対する追加関税がある。EUは中国のEVに対する補助金が不当に競争を歪めているとして、BYDに対して17.4%の追加関税を課した。これにより、BYDの欧州での価格競争力は大きく低下した。
BYDはこれまで、低価格を武器に欧州市場で急速にシェアを拡大してきた。2023年の欧州での販売台数は約1万5,000台と前年比で3倍以上に増加していた。しかし、関税引き上げにより、主力モデル「ATTO 3」の価格は約3万8,000ユーロ(約610万円)と、欧州の競合車種と比べて優位性が薄れている。
BYDの対応と戦略修正
BYDはこの事態を受け、欧州での現地生産を加速させる方針だ。同社はハンガリーに工場を建設中で、2025年末には生産開始を予定している。また、トルコにも工場を建設する計画を発表しており、現地生産比率を高めることで関税の影響を軽減しようとしている。BYDの広報担当者は「欧州は重要な市場であり、長期的なコミットメントに変わりはない。現地生産を通じて、競争力を維持していく」と述べている。
しかし、現地生産が本格化するまでには時間がかかる。その間、BYDは欧州での販売網の見直しや、より高付加価値なモデルの投入など、短期的な対策も迫られている。また、他の中国EVメーカーも同様の課題に直面しており、欧州市場での中国勢の勢いに陰りが見え始めている。
欧州市場への影響と今後の見通し
BYDの販売減退は、欧州のEV市場全体にも影響を及ぼす可能性がある。欧州ではEV需要が減速しており、2024年8月のEV新車登録台数は前年同月比で約30%減少している。BYDの苦戦は、さらに市場の冷え込みを加速させる恐れがある。
一方で、EUの関税措置は域内の自動車メーカーを保護する効果があるとされる。フォルクスワーゲンやステランティスなど欧州メーカーは、中国勢の攻勢に押されていたが、今回の関税で競争環境が改善される可能性がある。しかし、長期的には中国メーカーの現地生産が進めば、再び競争が激化するとみられる。
BYDの欧州戦略は、今後の中国EVメーカーの国際展開の試金石となる。関税という壁に直面したBYDが、現地生産やブランド力の強化で乗り切れるかどうかが注目される。



